模倣スキルを発現して2ヶ月がたった。
村の近くにいるモンスターは危なげなく倒せるようになってきた。
「アキーエ左からスライム2匹、正面からゴブリンだ。スライムを火球で牽制頼む。その間にゴブリンを始末する。」
「わかったわ!」
すぐに火球を放つために杖に魔力を送るアキーエ。
それを確認して正面から迫るゴブリンに意識を向ける。緑色の肌をした子供程の身長をしたモンスターだ。木の棒に尖った石を括り付けた槍を構えている。
ゴブリンに向かい左手をかざす。
「火球!」
5センチ程の火の玉がゴブリンの顔に向かい飛んでいく。
「ギギッ!」
火の玉を槍で落とそうと振り回しているゴブリンの横に回り込み、膝の裏を剣で斬りつける。
痛みで足に力が入らないのか、片膝をつくゴブリン。マルコイは顔前に来たゴブリンの首に向かい剣を振り下ろす。
ゴブリンが動かなくなったのを確認し、アキーエの方に向かう。
スライム2匹は熱に溶かされ動かなくなっていた。
「牽制の火球で倒せたの?」
「上手く2匹共巻き込むような位置どりができたからよかったわ。」
「スライム5匹とゴブリン3匹。これで依頼終了だね。討伐証明をとったら村に戻ろう。」
討伐証明を剥ぎ取り、今後について話しながらギルドに向かった。
「以前から言ってたけど、そろそろ1度王都にむかってみようと思うんだ。王都だと冒険者も多いから、模倣スキルでスキルを覚える機会もあると思うし。アキーエはどう思う?」
「そうね、この周辺のモンスターは問題なく討伐できるようになったし頃合いじゃないかしら?」
アキーエも王都行きについては同じように思ってくれていたので良かったが、マルコイは気がかりがあったのでそれについても意見を求める。
「でも今より強いモンスターと戦う前にもう1人は仲間が欲しいんだよね。俺が前衛でアキーエが後衛。敵が複数出た時に、もう少し安定して倒せるように盾役か中距離攻撃ができる人がいると思うんだけど。」
「い、いいけど。で、でも希望は男女どっちなの?」
「俺は性別は別にどっちでもいいかなと思ってるけど、あまりパーティ人数を増やすつもりはないよ。俺のスキルも特殊だしさ。だから信頼できる人がいたらってとこかな。」
「わ、わたしは別にいないでもいいわよ。」
(新しく仲間が増える事が不安に感じるのかな?)
「大丈夫だよ。どんな仲間ができようとも俺の1番の相方はアキーエなんだから。」
「そ、そ、そ、そんな事をわかってるわよ。この変態っ!」
そのまま耳まで真っ赤にしてアキーエは、ギルドに向かって走っていった。
そしてアキーエの顔が真っ赤になったので、反射的にお腹をガードした俺もアキーエを追ってギルドに向かうのだった。
ギルドに着いてナーシャさんに王都に向かう事、盾役か中衛でいい人がいないかを伝えてみる。
「ん〜、盾役か中衛ね。タンクの子が1人いるかな。ただこの間冒険者登録したばっかりなんだよね。だからいきなり王都に向かうのは難しいかな。」
なるほど。確かに戦闘経験が少なくていきなり王都にってのも難しい話である。
「それにタンクだから誰かと組んでからじゃないと戦闘経験も積めないだろうし。どこかにいいパーティーがいないかなぁ〜って思ってたところなの。」
こちらをジーッと見つめながら言うナーシャさん。
マルコイはしばらく考える。
「別に急いで王都に行く理由もないので、とりあえずタンクの人と会わせてくれません?」
「わかったわ。ちょうどギルドに来てるか連れてくんわね。」
今のスキル構成でも充分戦えているので、焦る必要はないかなと思いナーシャさんの要求を受ける事にした。
決してナーシャさんの上目遣いやら、胸元に負けたわけではない。だからアキーエさんや、威圧するのはやめてほしい。
後頭部に感じる人を射殺すような視線に耐えながら待っているとナーシャさんが戻ってきた。
そばにいるのはやや低身長で金色の髪を肩程度まで伸ばしている女の子だった。
丸っこい目が特徴的でふんわりとした可愛いという言葉がとても似合う感じだ。
しかし皮の鎧を着て、身長より大きな盾をもっているのでギャップが凄い。
「こんにちは。ミミウって言います。スキル【盾士】を持っているタンクです。」
「あれ?あなた武器屋のミミウじゃない。冒険者になったって、お店とか大丈夫なの?」
ミミウは家は武器屋を営んでおり、俺やアキーエも何度か足を運んでいる。その時に店番をしていたミミウとも知り合いになっており、ミミウが冒険者になったことに俺も驚いていた。
「はい。スキル【鍛治】や【判別】とかが発現しなかったし、冒険者向けのスキルだったから父は自由にしなさいって。」
「そうなの。だったら冒険者になる前に相談とかしてくれてもよかったのに。知らない間じゃないんだから。」
「最初はアキーエさん達に相談しようかなと思ったんですけど、私がパーティーに入れてもらったら、お2人の邪魔になるかと思って‥」
「ば、ば、ばかね!そ、そんなの気にしなくていいわよ。わたし達はパーティーなんだから、そ、そんなこ、こ、こ、こ、恋人とかじゃないのよ!」
どもりすぎである。確かに俺とアキーエの関係は幼馴染だから、気にする必要はないんだけど。
しかしタンクと聞いていたから、勝手にガチムチのおっさんや、ガチムチの青年、ガチムチの少年だと思っていたので心底ラッキーである。
「顔見知りだし、アキーエも問題ないみたいだから大丈夫かな。俺も可愛い女の子の方が張り切れるしさっ!」
左側から殺気が迫ってきたので、左ボディを防御する。すると殺気のした方とは別側の右腹にぼでーが刺さる。
「ぐぅ、ま、まさか殺気を飛ばしただと。なんて高度なフェイントを‥」
「ミミウ、変態はほっといていきましょう。あと変態には気をつけるのよ。半径10メートル以内に近寄ってはダメだからね。」
またも膝から崩れ落ちる俺をよそに2人はギルドの外に出ていくのだった。
ミミウの【盾士】として、どの程度動けるのか確認するため、もう一度村の外に足をプルプルさせながらやってきた。
「それじゃモンスターが出てきたら、盾術でモンスターを一匹ひきつけてもらうよ。危ないと思ったらすぐに俺が加勢するから。」
「わかりました。頑張ってみます」
ちょうどそこにゴブリンが2匹森の別々の場所から出てくる。
すぐにミミウが、近接用の武器であるウォーハンマーで盾を叩き大きな音を立てる。
ゴブリンのうち一匹はミミウの立てる音が気になったのか、ミミウの方に向かっていく。
「アキーエ、こちらに向かってくるゴブリンに火球を打って足止めをお願い。」
「わかったわ。」
すぐにゴブリンに火球を打ち込み足止めする。
火を警戒してその場に留まるゴブリン。ミミウの方に向かったゴブリンは石で作ったのか、ショートソードほどの長さの武器を振りかぶりミミウに向かっていく。
ゴブリンはミミウに向かい武器を振り下ろすが、ミミウの大きな盾に阻まれている。
そして大きめに振りかぶった時、ミミウが盾ごとゴブリンに体当たりをする。
ゴブリンは後ろに飛ばされて尻餅をつく。
「おお〜、シールドバッシュまで使えるのか。」
そのまま倒れたゴブリンにウォーハンマーを打ち付ける。
数回振り下ろすとゴブリンは動かなくなっていた。
一匹のゴブリンを倒したあと、ミミウは残る一匹の方に向かう。
火を避けてこちらに向かってきたゴブリンの攻撃をまたしても大きな盾で防ぐ。
その隙に横からマルコイが斬りつけ、こちらを向いたゴブリンをミミウが盾で押し付ける。
動きを阻害されたゴブリンの首をマルコイが切り落とす。
「盾術はもう戦えるレベルだな。しばらく連携を確かめる為に、この辺りで経験を積もう。ところでミミウは【盾士】のレベルは何になるんだ?」
「お父さんとギバスさんに手ほどきを受けましたけど、まだ【盾士】のレベルは2です。ほら。」
ミミウはギルドカードを見せてくれる。
ミミウ
冒険者ランクE
スキル【盾士Lv.2】【遠視Lv.1】
あれ?
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