何も無く平穏な日常よ

平日
ゆーj
ゆーj

何も無い日常

公開日時: 2021年2月5日(金) 04:58
更新日時: 2024年9月16日(月) 23:03
文字数:4,608

人は皆新しい何かを求めている。別にそんなのを求めて何になる?とか馬鹿馬鹿しい、などと言う捻くれたことを言いたい訳ではない。だって私も何かを求めている『一人』なのだから。

いつもの部屋。いつものベッド。スズメたちが朝を知らせるように鳴く。

「舞〜」

聞き覚えるのある声。当たり前だ。私の母さんなのだから。

階段の登ってくる音がする。ドアが勢い良く開く。これが異世界系の物語なら美青年か美少女が声をかけて(世界を救ってくれ!!)なんて…そんな楽しいようなことは起こらずただ母さんが起こしに来ただけだった。

「いつまで寝てるのよ?今日から高校生になるって言うのに全く変わんないんだから」

そう、今日から私、内田 舞は高校生になるのだ。でも高校生より勇者とかになりたい。そんなワクワクな選択があれば良かったのに

「はぁぁ…」

ついつい深い溜息が出てしまう。まぁ別に熱があるわけでもないので布団から顔を出す。

「母さんおはよー」

「はい。おはよう、もうご飯できてるんだから顔を洗ってぱっぱ食べてちょうだい」

めんどくさい。つまんない。そんなことを思いながら布団をどかしベッドから体を出す。

その場で背中を伸ばし大きなあくびをし、下へと降り顔を洗い朝食を頂く。

「いただきまーす」

「ご馳走様でーす」

すぐに食べ終わる

お皿を台所へ持って行き水につけ自分の部屋へと戻り制服に着替えに行く。

ありきたりだこんなものは私の求めているものでは無い。

全く、いつになったら私は超人な能力を得るのだろうか。

そんなことを考えながら制服に着替えて、髪を溶いていた。

インターホンの音がなる。あいつが来たのだろう。そう私の親友の叶出だ。

玄関のドアが開く。

「まいっちー。起きてるー?」

「うんー。起きてるよー」

この子は佐倉叶出。私達は幼稚園からの知り合いで、幼馴染ってやつだ。

まいっちなんてあだ名は知り合ってすぐ付けられた。

髪を整え、学校のカバンを持ち私は叶出の所へ行く。

「そうなのよ、あの子本当に朝弱くてね」

「まいっちだからねー。あ、おはよう」

母さんと雑談をしていた叶出が挨拶をする。

私も返事を返してやらないといけない。

「うん。おはよう」

「それじゃあ二人とも、気をつけて行ってらっしゃい」

「「行ってきまーす」」

仲良く声を揃えて家を出る。

ドアが閉まるのを確認したあと、私たちはお互いの顔を見つめ合い、つい笑いが溢れた。

「ほんと、私達姉妹みたいだね」

「私は双子レベルだと思ってるよ」

私達は何をするのもいつも一緒だ。だから叶出といると楽しいし、何かに出会えると思っていつも心を踊らせている。

「何考えてるの?」

やっぱりこいつは私が何かを考えていることに気付いていた。

意地悪に私は「なんだと思う?」「んー?」

考えている考えている。さぁどんな答えが出るかな?

「私の胸小さいなぁ…かな?」

……舐めているのか?私は大きな声で怒鳴る

「んだとコラァァァァァ!!!」

笑いながら逃げる叶出。全く朝っぱらから声を出させるなよ。

追いかけっこしていたから学校にはすぐ着いた。もうしんどい、疲れた。私と同じ運動量走っているのに全然元気な叶出が正門前で手を振っている。バカは体力と言うものを知らないのだろうか?

正門前につくと上級生達が私達の所へ来る

「君達新入生だよね?」

「はい!そうです」

元気良く返事をする叶出。まるで犬のようだ

「じゃあこれつけてね。」

「わかりました。ありがとうございます」

赤い花の新入生と書いてあるバッチ的なものをくれた。

それから私達は同じ学年であろう人達を後ろからついていく。

ついて行くと何だか人溜まりができていた。掲示板にクラス表が貼られていたのだ。

右から順へと目を追って自分の名前を探す

「あ、あったよー!同じクラスだね」

やっぱりか。なぜかというと叶出とは小学校からずっと同じクラスなのだ。

人数は少ないわけではない、寧ろ多い方だと思う。だけど私達は一度も別れたことがない。

ある意味すごい。これは神様が一生いろと言わんばかりだ。

神様、そんなことより早く私を未知の世界へ連れて行ってください

「ねぇ聞いてる?」

私は神様に話しかけていると叶出が頬をプクッとさせ話してくる。

「あー、ごめんごめんちょっとボーってしてた。」

「どうせ「神様私を未知の世界に連れてって〜」とかでしょ?」

驚きはしない。だって叶出も『何か』求めているその内の一人なのだから。

だから私達は仲良くなった。仲良くならざるを得なかった

「さっすがー。私のことわかってんねー」

「当たり前だよ、何年の付き合いだと思ってるのよー。てか、私も常日頃そう思ってるしね」

これが私が双子だと思っている所だ。叶出と出会えて本当に心の底からありがとうと神様にお礼をしたくなる。なるだけだけどね。

「クラス表を見た人達は先生たちの指導のもと、席へついて下さーい」

女の先生が新入生達に声をかけていた。綺麗だなぁ、二十前半かな?

「ねぇねぇあの先生美人だね。まいっちの好みなんじゃない?」

「否定はしない」

「声かけてみる?」

「んー、ナンパなんて思われないかな?」

「いやいや、まいっち女の子でしょ。てかここの生徒でしょ、思うわけないじゃん」

冷静なツッコミを入れてくる。このくらいが私には丁度いい。オーバーに突っ込まれても困る。

「じゃあ普通に話しかけてくるよ」

「普通に話しかけに行く気なかったの?」

こんな細かいとこも戸惑いなく突っ込んでくれる。こんな友達他にいるだろうか。いや、いないな

「おはようございます」

笑顔で挨拶をする。

「はい。おはようございます。新入生ね、会場はこっちよ」

「いえ、分かってますよ。先生が綺麗だから声をかけたんです」

うん。なんで私はこんな言い方をしたのだろう

「あら、嬉しい。ありがとう」

あっさりとした返事が来た。後ろで叶出が笑いもがいている

「笑いすぎだろ?何がそんなに面白い?」

笑いながら私に伝える

「あはははは…だ、だって、、普通に話すって言っておいて結局、プッはははははは無理無理無理」

多分こいつは普通に話すと言っておいてなんでナンパみたいな声の掛け方してるの?って言いたいのだろう。私だって思ったっつーの。あーヤバい私も貰い笑いしてしまいそう。

「ふふふ、ほらもうすぐ始まっちゃうから講堂に行きなさい」

笑う前に先生に指示された

「「はーい」」

私達は言われた通りに講堂に向かう。

席についてすぐに始まった

どこもそうだとは思うが校長先生の話は長い。そんなの言ったところで誰も聞いてないのに

「…百合ノ宮高校の生徒としてこれから楽しい学校生活を送ってください。以上です」

やっと終わった。

背筋を伸ばし一礼。後ろの列から皆出て行く。そのまま教室に行くのだろう

出口をでて、そこに待っていた叶出と合流

「舞さん校長先生のお話はちゃんと聞きましたかね?」

「全くですわ。貴方はちゃんと聞きましたかしら?」

「いいえ、寝ていましたわ」

「凄いな、私それは無理だわ」

ものすごくしょうもない茶番をしていたらいつの間にか教室についていた。

「さぁ早く席についてください」

私たちの担任だろうか

「あ、貴方はさっきの」

なんと教室に立っていたのはさっき私がナンパした先生だった

してないけどね

「どうもです」

「先生が私達の担任ですか?」

「そうですよ。一年間よろしくお願いしますね」

なんて眩しい微笑みなんだ。あれかこの人は人間界へ降りてきた女神なのでは?てことは私をどこかに連れて行ってくれるのでは無いのか?

「先生実は女神で私をどこかに連れて行ってくれる案内人ですか?」

おいおい

「え?あ、えっと…え???」

こいつ凄いな、普通言わないだろ。まぁ私も言いたかったんだがな、だが人がいる前では恥ずかしくて言えない

「バカかお前。すいません女神様この子を許してください」

「はい、え?」

あ、しまったつい先生と女神を言い間違えた

「もう。先生をからかうんじゃありません」

可愛い。お嫁に欲しい、じゃなくて謝らないと

「ごめんなさい先生」

そう言うと先生は自分の手と手をギュッと握り「分かればよろしい」

なんだろうこの可愛い生き物をお持ち帰りしたい

私達は自分の名前の付いてある机に移動し席に着く

「ええ、皆さんおはようございます」

HRが始まった

「私は皆さんの担任になりました田中信子と言います。これから一年間勤めさせていただきますのでよろしくお願いします」

え?モブ子?なんてふさわしくない名前なんだろう、名前つけたやつ出てこい私が土に埋めてやる

「漢字はこう書きます」

あ、のぶこ、ね。すいません先生聞き間違いをしてました。てへ

「それでは早速ですが予定表を配ります。それと明日皆さんには朝のHRの時に自己紹介してもらいますので家でしっかり考えて来てくださいね」

自己紹介か…めんどくさいな

「何か先生に質問などはありますか?なければ今日はこれで終わります。寄り道せずまっすぐ車や自転車などに気をつけて帰ってくださいね」

なんて生徒思いの先生なのだろう。キューピットの矢が刺さっちゃったよ。これはあれだ、先生をテイクアウトして保管しないとだめなのでは?

そんなことを考えていたら何人かが立ち上がり教室を出る

「まいっち帰ろー」

「うん」

椅子から立ち上がり教室を出ようとすると田中先生が私の名前を呼ぶ

「内田さん」

「はい、なんですか?」

え、名前呼ばれちゃったよ。今日私の命日かな?いや、ちゃんと下の名前呼ばれてないから死ぬ訳には行かない!慎重に先生のところへと向かう

「内田さん。貴方先生が話しているのにボーっとしてたでしょ?だめよ、高校生になったんだからしっかりしないと。め!ですよ」

待って待って今の録音させてほしいです。お金3000円までなら出すから録音させてほしい。め!なんて言う人なんているんだ。この人は希少生物なんだな

「すいません今度から気をつけます」

「よろしい。素直な子は好きですよ」

「私は先生のこと大好きですよ」

あ、また口が滑ってしまった

「ふふっ、ありがとうございます。」

またもやあっさりと返された。そして叶出はまた笑っていた。こいつほんとあれだな

「ほら、笑ってないで帰るよ叶出」

「あっはははは…ふぅ、はーい。先生さよならー」

「はーいさようなら」

階段を降り靴箱へと足を進める

「ねぇ、田中先生が担任でよかったね」

「うん。絶対あの人は私が捕獲して世話してもらう。誰にもあげない」

そんなことを言ったら叶出は露骨にうわーって言う顔をしていた。

「じ、冗談だよー」

叶出は低いトーンで

「嘘だ。絶対心の底から思ってるでしょ」

さすが自称双子だな。私が思った事をまるで叶出にコピーされているみたいだ

「それはいいから早く帰ろう」

ここは話を逸らして違う話に変えよう

「んー。ま、いっか」

よし。このまま話題を変えよう、そう思った時叶出が

「あ、田中先生なんだけどさ」

また先生の話に戻ってしまった

「何?」

「うん。先生って結婚してるのかな?」

…………ん?

何を言っているのだこのアマは?あの女神が?結婚?正気か?

「なんでそう思ったの?」

「ん?いや、指に指輪みたいなのしてたからさ、そうじゃないのかなぁって思ってさ」

「マジ?」

「うん。先生の指にキラキラしてるのついてたからもしかしたら結婚指輪かなって」

な、なんだと…だとしたらあの人はもう誰かの女神になっているとでも言うのか?そんな馬鹿なことがあるか?私は先生が私のものになった時に何をしてもらおうかもう決めているんだぞ?

「違うかもしれないから明日聞いてみようよ」

確かに叶出の言う通りだ。知るのは少し怖いが叶出の見間違いかもしれないからな

明日絶対意地でも結婚していないと言わせよう

「まいっち、、顔怖いよ」





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