公園で遊ぶロリたちを気持ち悪いほど無垢な笑顔で見守るおっさんたち。
相変わらず狂気を感じる光景を横目に見つつ、ノドカの背中に付いて行く。そこでふと、一つの疑問が頭に浮かぶ。
(成人している女は何処にいるんだ?)
ロリはそこら中にいるが、大人の女性を先ほどから一人も見ていない。それこそ、先ほど訪れた教会もロリしかいなかった。
———ロリコンによるロリの為の国家。
入国する前にノドカが言っていたことを思い出す。もしもそれを言葉通りに捉えるならば———。
「……この国にはロリしかいないのか?」
「ふふ、何を考えているのかと思えば……」
いつの間にかノドカがこちらを覗き込んでいた。
「うぉ、い、いつの間に」
「後ろから突然足音が消えたのでびっくりしましたよ」
どうやら考え事をしていたせいで足が止まっていたらしい。
「ご、ごめん」
「もう。迷子になったのかも、と思ってしまいましたよ」
ノドカは柔和な笑みを浮かべる。聖母のような笑みに思わずドキリとしてしまう。
「もうそこに気づかれるとは、中々良い着眼点をお持ちですね」
「気づかれる? ってことは……」
「はい、その通りです。この国家の女性はロリ、少し正確に言うならば13歳未満の女性しかいません」
「なっ……」
絶句。
それは確かにロリコンにとっては理想郷であり、俺自身何度も夢見た場所だ。でもそれはあくまで理想郷としての話であり、現実に存在したそれは歪な何かを感じた。
「不思議なことではありませんよ。そもそもこの国家は前皇帝によって13歳以上の女性の立ち入りを禁止していましたし、この国家に住む少女たちは体も心も13歳以上に成長しませんから」
ノドカはさらっととんでもないことを言う。
「立ち入り禁止? 成長しない?」
「はい。この国家は特殊ですから」
「いや、特殊だからで済む問題じゃないだろ……」
「まぁ、そうかもしれませんね。長いことここにいるとよく分からなくなりますから」
「なるほ、……いや待て待て、ノドカは今何歳なんだ?」
「女性に年齢を尋ねるなんてマナー違反ですよ」
ノドカはこちらに向いたまま人差し指を口許に当てる。秘密という事らしい。ということは少なくとも見た目以上の年齢ということだろう。
ロリババアというやつだろうか?
「和樹さん、何か失礼なことを考えていませんか?」
小悪魔じみた笑いを浮かべるノドカ。
「それに精神的にも成長していないので、ばばあと呼ばれるのは心外です」
「そ、それもそうだな……ごめ、……うん?」
今ナチュラルに心を読まれたのは気のせいだろうか。
「ふふ、分かればいいのです。……おっと、立ち話をしている場合ではありませんでした。早く次の目的地に行かないと」
ノドカは再び歩き出す。その横を付いて行く。
「次は何処に向かうんだ?」
「宿泊施設です」
「宿泊? あぁ、ようやくまともな所で寝れらるのか、俺」
たった一日ベッドで寝られなかっただけで、あのふかふかが恋しくなる。
「い、今までどんな所で寝ていたんですか……。安心して下さい、すごく快適ですから」
「そうなんだ、いやぁ楽しみだな……でもそれって結構費用が掛かるんじゃあ……」
「ご心配なく、国営の施設なので一切費用は掛かりませんよ」
「無料なのか。そ、それはそれで怖いが」
「真正ローリ帝国の一員となってくれる方はロリを守るという重大な義務がありますから。この程度の援助は当たり前ですよ」
「ロリを守る、か。……あれをしとけばいいのか?」
散歩をしているロリの後ろでロリを見守る数人の男を指差す。
「あれは最低限の義務です。和樹さんにはもっと上を目指してもらわなければなりませんよ」
「上? あぁ、ロリコンか」
この国でヒツギと暮らすためには特権階級であるロリコンにならなければならない。
「その通りです」
「とは言うもの、どうすればロリコンになれるんだ? 誰だってなれるものではないだろ?」
「ロリコンになるには、みんなから認められればいいですよ。この方はロリコンとして相応しい方だと」
「な、なんて曖昧な……」
「曖昧ではありませんよ。きちんと投票が行われ、投票者の過半数以上の支持を得ることができればロリコンになることができます」
「きわめて政治的な何かを感じるな、それ」
「察しが良いですね。その通りです。ロリコンになった方々は神聖ローリ帝国の政治的側面に関わることも可能です。それこそ皇帝になる事だって夢ではありません」
「皇帝、か」
男子たる者一度は憧れる称号だ。最もこの国でそんな言葉を聞く事になるとは思わなかったが。
「まっ、皇帝になるには別の壁があるのですが……、おっと、こんな話をしている間に目的地に着きましたよ。ここが宿泊施設、『トマリの宿』です」
ノドカが右腕を建物の方へ伸ばす。そこには温泉街にありそうな木造の建築物があった。どう考えても
外観がこの国の雰囲気とマッチしてない。
「ここだけどう考えても文化圏が違くないか?」
「気のせいではないですか? ともかく、中へ入りましょう」
「絶対気のせいじゃない気がするぞ……」
俺の疑問は他所に、ノドカは俺の背中を押す。
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