今度は湖側に行ってみた。
庭園は湖側にもあり、その先にはインフィニティプールとプールバーがある。
湖までは、なだらかな傾斜が続き、湖畔は白い砂浜になっている。
「あの湖で、魚は釣れるのかい?」
オレはローレンに聞いてみた。
「はい、虹鱒や姫鱒などの鱒科の魚が釣れます」
「釣具の他、カヌーもご用意してますので、いつでもお申し付け下さい」
「毎日釣りして暮らせるとは、なんと贅沢なことだ」
湖の真ん中辺りには、島があった。
頑張れば、カヌーを漕いで行けそうな距離だ。
湖側を一通り見て、館に戻ってきて、また疑問が湧いた
「ところで、食料はどのように確保してるの?」
「はい、領地内に牧場があり、乳牛と食肉牛を飼育しています」
「豚と羊、鶏も飼ってますので、食肉や乳製品は領内で全て賄えます」
「野菜も無農薬栽培してますし、小麦や米も領地内で生産しております」
「淡水魚は湖で釣れますが、海水魚は20キロ離れた海まで行かないと確保できません」
「湖から海までは川を下れば行けますので、もしご希望でしたら海釣りにもお連れできます」
「領地内の電力は、川の上流にある滝を利用した水力発電と風力発電の併用による完全自家発電となっております」
「水は山麓から湧き出る伏流水を濾過して使用しております」
「汚水は浄化槽で処理しており、環境に配慮したシステムとなっております」
「へ~、そこまでエコなんだ」
「この一帯は火山帯に隣接しておりますので、掘れば温泉が出てくる可能性が高いと思われます」
「温泉か~、それは楽しみだ、いつか掘りたいね」
「ご主人さま、お食事の用意ができましたので、お部屋にお戻りになりませんか?」
「もうそんな時間か、それじゃ部屋に戻ろうか」
オレが部屋に戻ると既に夕食の用意ができていた。
席に着くとメイドたちが、次々と料理を運んできた。
この日は洋食のコース料理だ。
「お酒もございますが、何か飲まれますか?」
「え、お酒もあるの?」
「はい、ビールにワイン、ウイスキー、日本酒もございます」
「それじゃあ、ビールをいただこうか」
しばらくすると大きめのグラスに泡3、ビール7の黄金比率の生ビールが出てきた。
オレは黄金色の液体を一気に喉に流し込んだ。
「ぷはー、堪らんなぁ」
爽快なホップの香りが鼻から抜けていく。
「このビールはラガーだよね。どこで作っているの?」
「地下に小規模ながら醸造所がありまして、そこで造っております」
「種類はラガー、エール、ドゥンケル、シュヴァルツの4種類です」
麦芽・ホップ・水・酵母だけで造っている混ぜ物なしの正統なビールだ。
「毎日お飲みいただいても無くならない位の量はお造りしてます」
「他に白ワインと赤ワイン、ウィスキー、日本酒も造っております」
日常的に飲む酒には不自由しなさそうだ。
夕食は前菜からメインと続きデザートまで、ここが異世界とは思えぬ豪華さで満足度は満点だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
異世界に来て1週間が経った。
転生前は目まぐるしい毎日であったが、ここではゆっくりと時間が流れている。
ここの生活はまさに平和そのもの。
朝は、朝食をとってから湖に釣りに出かけた。
元々、釣りが趣味だったオレは、かねがね思う存分釣りをしたいと思っていたが、その願いが、こんな形で叶うとは思ってもみなかった。
湖畔から2人乗りのカナディアンカヌーに乗り、50mも漕ぎ出せば、それなりの水深となる。
釣り糸を垂らすとルアーでもエサ釣りでも魚が面白いように魚がヒットする。
この湖の魚は全く擦れてないので、警戒心が薄いのだ。
今まで釣りをした者など皆無であろうから、当然といえば当然だ。
釣りは不思議なもので、釣っていて全く釣れないのもつまらないが、釣れすぎるのも興を削がれるのだ。
常々、釣りの醍醐味は魚との駆け引きだと思っているので、これは単なる『漁』なのかも知れない。
この湖は淡水で、主にサケ科の魚が釣れるが、たまに見たこともない変わった魚も釣れる。
1時間も釣ればクーラーボックス2つが一杯になるので、岸に戻らざるを得ない。
「ご主人さま~、釣れましたか~?」
メイドたちが湖岸から手を振ってオレを待ち構えている。
「今日も大漁!!」
カヌーが接岸するとメイドたちは、メイド服の裾が濡れるのも気にせず、湖岸に引き上げるのを手伝ってくれた。
オレが釣った魚はメイドたちが手分けして厨房に運び、今日の夕食用に調理される。
残りは頭と内臓を取り、一晩干した後スモークしてから貯蔵される。
毎日、これだけ釣れると、貯蔵も増える一方であるが、幸いメイドロイドも普通の人間同様に毎日食事からエネルギーをとっているので、余すことはないらしい。
釣りの後は庭園内を散歩して、農作物の手入れや収穫を2時間ほど手伝ったら、昼食の時間となった。
今日の昼飯はチーズたっぷりのピザを作ってくれた。
薄い生地に4種のチーズが乗っているクァトロフォルマッジだ。
しかし、なんでも知ってるなぁ、オレの好み。
そう思いながらもラージサイズのピザを1枚完食した。
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