「ん~、やっぱり今の知識・記憶を持ったまま、人生をやり直してみたいかな…」
「分かりました、望み通りに転生させましょう」
「それと少年を救った褒美として望みを3つ叶えてあげましょう」
「貴方の望みを言ってご覧なさい」
「え、いいんですか?」
「そうだな~」
オレは暫く考えてからこう答えた。
「オレは綺麗な風景の中にあるリゾートのような場所に住みたいです」
「もう一つは女運が悪かったから、今度は良縁に恵まれたいですね」
「あとは生活するのに困らないようにしてもらえると助かります」
「分かりました」
「では、具体的にどのような場所に住みたいですか?」
「湖畔に建つリゾートホテルみたいな建物が良いですね」
「周りに山や川、森があるような、自然豊かな場所がいいです」
「分かりました、ちょうど良い場所があるので、そこにしましょう」
「確かに、貴方の今までの女性運は最悪だったようですね」
「分かりました」
「貴方の想い人が貴方に好意を持つようなスキルを特別に付与しましょう」
「あとは貴方の努力次第でどのようにも出来るはずです」
「それと身の回りの世話をする者、それと生活する上で便利なスキルもオマケで付けておきましょう」
そう言うと女神は紺碧に光輝く指輪をオレに渡した。
「この指輪は貴方に特別なスキルを付与してくれる『英知の指輪』です」
「指輪のスキルを見たいと貴方が念じれば、その時のステータスが見られます」
「ただし、スキルは最初から有効という訳ではありません」
「一定の条件を達成したらスキルが獲得できるので色々と試してみてね」
「女神様、その条件って何ですか?」
「それは内緒です」女神が意地悪っぽく笑いながら答えた。
「最初から達成条件を教えてしまったら、貴方が努力しなくなるし、面白くないじゃないですか」
「意地悪しないで教えて下さいよ」
「ダメです、それでは私の楽しみが減りますから」
女神はイタズラっ子のように笑った。
女神フィリアは見かけによらず、子供っぽい性格なのかも知れない。
「他に何か聞いて置きたいことはありますか?」
「えっと、異世界でオレはどんな人間に転生するのですか?」
「それも選べますが、何か希望はありますか?」
「そうだな~」
「性別は男で年齢は今より一回り若い18歳がいいかな」
「出来れば身長は180センチ位、体重は70キロで笑顔が素敵な爽やか系イケメンにして下さい」
「分かりました、希望どおりにしましょう」
「他に質問はありますか?」
「転生する世界って、どんな世界なの?」
「今まであなたがいた世界とは似て非なる世界です」
「地球の文明で言うと中世から近世の西洋文明に似ています」
「あなたが建築デザイナーとしても活躍する余地も十分にあります」
「違いと言えばもうひとつ、魔法や魔道具が使われている世界です」
「え、まるでファンタジーのような世界ですね」
「設定としては面白いと思いますよ」
「さあ、準備ができたなら、新しい世界へ旅立ちです」
女神がそう言うと辺りは眩いばかりの光に包まれ、オレは異世界へと転生した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気が付くとオレは霧が立ち込めた深い森の中に倒れていた。
起き上がって確認してみたが、どこにも怪我はない。
オレは本当に異世界に転生したようだ。
しかし、元の世界と何処が違うのか、判断材料に乏しい。
それは森の中と言うだけで、何ら代わり映えしないからだ。
鏡がないので自分の顔は確認できないが、衣服は同じものを着ていた。
辺りは見渡す限りの森で人影や建物、生物の影は見えない。
この深い霧が晴れてくれれば、何か見えてくるのかも知れないのだが。
しかし、いきなり濃霧が立ち込める森の中に放置されるとは…
女神フィリアはオレの願いを叶えてくれると言う話だったのだが。
じっとしていても埒があかないので日の差す方向へ歩きだした。
森は広く、霧で先が見通せない中、当て所なく彷徨っている内に日が暮れて夜になった。
夜は月明かりを頼りに大きな木の窪みに身を潜め、遠くで聞こえる獣の声に怯えながら眠った。
次の朝、嘘のように霧は晴れ、光が指す方角に一本の道を見つけた。
やがて細い川が現れ、その川沿いの道を辿って歩いた。
空腹に耐えながら、道を辿って行くと霧の中に忽然と白亜の館が現れた。
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