「最初の目的地に到着しました、イベントクリアおめでとうございます」
英知の指輪が派手なファンファーレの音と共に知らせた。
「え、何?、このくだり」
「やっぱり女神さまが用意したイベントだったのか」
高い壁に囲まれた白亜の館に近づくと、門は開いており、オレは中へ入って行った。
入口まで続く石畳の道を歩いて行くと、中から微笑みを浮かべた50代くらいの紳士が執事服姿で立っており、オレを手招きしていた。
入口の両側にはメイド服姿の少女たちが30人ほど整列していた。
見ると、どの娘も目移りするほどの美少女だ。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイドたちが声を揃えてオレを出迎えた。
美少女メイドたちの歓迎に驚きを隠せないオレは、絞り出すように呟いた。
「こ、ここは?」
「ここは女神フィリア様から賜わったカイト様の館でございます」
「私は、この館を管理しております執事長のローレンと申します」
「どうぞ宜しくお願いします」
そう言うと見事なロマンスグレイの紳士は深々と頭を下げた。
「そして、この者がメイド長のソニアでございます」
ローレンが紹介したソニアは20代前半と思しき、知性を感じさせる黒髪の美女だった。
「メイド長を務めるソニアでございます」
「カイト様、何なりとお申し付け下さいませ」
そう言うと彼女も深々と頭を下げた。
後で聞いた話では、彼らは全員人間ではなく、女神フィリアが創ったヒューマノイドタイプの生命体「メイドロイド」なのだ。
メイドロイドは、オレがこの館で快適に過ごせるように、女神フィリアが創造してくれたそうだ。
「君たち、一見すると人間みたいに見えるけど、人間じゃないんだね」
「私たちはカイト様をお守りし、お世話をするために特化したメイドロイドでこざいます」
メイドロイドは見た目も話し方も普通の人間と何ら変わらないように思える。
神テクノロジーをそこまで駆使してくれるとは、女神フィリアに感謝せねば。
それにしてもメイドたちは、どの娘もスタイル抜群で、いずれ劣らぬ美少女揃いで、オレの口元がつい緩んでしまう。
オレがメイドたちに見とれてニヤけているのを見てローレンがこう言った。
「メイドたちは全部で36名、外見はそれぞれ個性を持たせ、ご主人様の好みに合わせて造られております」
そう言われてみると、確かにオレ好みの娘ばかりだ。
「もしお好みのメイドがおりましたら、後で寝室へ伺わせますが」
な、何だと~!!
もしかしてメイドロイドは夜の相手までしてくれると言うのか?
ローレンの一言にオレは動揺を隠せなかった。
「あ~、も、もしかしたらお願いするかも」
「ご主人様、さぞや空腹のことと存じます」
「お食事の用意が出来ておりますので、ダイニングルームへご案内いたします」
そう言ってソニアはオレを手招きした。
歩き出すとメイドたちは全員ぞろぞろとオレの後に付いてきた。
まるで王侯貴族になったかのようなコソバユイ感覚が背筋を襲い、自然に浮かぶ笑みを必死で堪えた。
ロビーを抜けると天井が高い吹き抜けのホールで、その先がメインダイニングとなっていた。
建物の内装は、どれも白を基調とした流麗かつ洗練されたものだった。
「こちらがご主人さまの席でございます」
ローレンがオレを手招きしている。
「本日の昼食はイタリアンをご用意致しましたので、お召し上がり下さい」
テーブルにはパスタとピザが3種類ずつ、サラダとスープ、コーヒーもあった。
どれも良い匂いがして、とても美味しそうだ。
昨日から何も食べていないオレはメイドたちが、取り分けてくれた料理を次々と平らげた。
美味い、美味すぎる、なんだこの旨さは。
空腹は最高のスパイスと言うが、どの料理もオレ好みの味付けになっていた。
「このパスタ、最高に美味いよ」
「どの料理もカイト様の好みに合わせた味付けとなっております」とソニアが言う。
「えっ、オレの好みが分かるの?」
「はい、フィリア様からカイト様に関するあらゆる情報をいただいております」
微笑みながらソニアがサラリと言った。
「え~、あらゆる情報って…」
オレは少し複雑な感じがした。
思う存分食べて満腹になると、今度は猛烈に睡魔が襲ってきた。
「ご主人様、お疲れでしょうから、今日はお休みになられては如何でしょう」とオレの様子を察したソニアが言った。
「ああ、そうするかな、眠くて堪らないんだ」
「畏まりました」
「それでは、お部屋へご案内致します」
そう言うとソニアは、オレをメインホール奥のエレベーターへ案内した。
エレベーターに乗ると湖側が透明になっており、外の景色を見ているとエレベーターは8階に到着し、扉が開いた。
「最上階はカイト様の専用居住スペースとなっております」
エレベーターを降りると、そこは広いリビングで、天井から床まで全てガラス張りの窓からは周囲の景色が一望できた。
景色は素晴らしいが、今はとにかく眠い、早くベッドに潜って眠りたい。
その様子を察した、ソニアがオレをベッドルームへ案内した。
白を基調としたラウンドフォルムの室内は20畳ほどでキングサイズのベッドが2台置かれていた。
「どうぞ、ゆっくりとお休み下さい」
そう言うとソニアは一礼して部屋を出て行った。
オレは倒れ込むようにベッドに入り、あっという間に夢の世界の住人となった。
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