オレが着替えてダイニングに行くとソニアが待機しており、彼女の横には3名のメイドが整列していた。
「本日、臨時でお世話させていただくメイドたちです」
そう言うと3人はオレに挨拶した。
「お初にお目にかかります、ご主人さま」
「本日担当させていただきますルイと申します、どうぞ宜しくお願いします」
そう言って頭を下げると肩までのピンクブロンドのポニーテールが揺れた。
ルイは礼儀正しく、笑顔が素敵な爽やか系の美少女だ。
「おはようございます、ご主人さま」
「今日一日、お世話させていただきますレイと申します、宜しくお願いします」
レイは黒髪で長めのポニーテールがよく似合う知性的で落ち着いた感じの美少女だ。
「ご主人さま、お会いしたかったですぅ」
「私の名前はリイ、今日一日お世話しちゃうぞ!」
リイは少し短めの金色のポニーテールが可愛い、明るく天真爛漫で、少し弾けた感じの美少女だ。
「ご主人さまに対して、その言葉遣いは何ですか」
今の言葉遣いにソニアの説教が始まったが、リイは可愛く、ペロッと舌を出しただけで全く気にしてない様子だ。
「ルイにリイにレイか、今日一日、宜しくね」
そう言ってオレは席に着いた。
そう言えば、今日からメイドたち全員ポニーテールにしたんだった。
全員左胸にネームプレートを付けているので間違わないと思うが、良く似た名前を付けたものだ。
リナとリイ、ルナとルイ、レナとレイか。
なんか適当に付けたような感じがするな~。
ダイニングの窓からは青い空と白い雲、エメラルドグリーンの湖が一望できる。
今日もいい天気だ。
ルイがカートに乗せて朝兼用の昼食を運んできた。
今日のメニューはオムライスとサラダにコーヒーだ。
見るからに美味そうなオムライスだが、ルイが真ん中を縦にナイフで切ってくれると中から半熟のふわっふわ、とろとろの玉子と溶けたチーズが一緒に溢れ出した。
これ、絶対美味しいやつだ。
さあ食べようかとスプーンを手に取ると
「ちょっと待って下さい、今日はご主人さまに特別サービスがあるよ」
リイがニコニコしながらオレの傍にやってきた。
「オムライスがもっと美味しくなるよう、特別にケチャップでお絵書きサービスしちゃいま~す」
リイは頼みもしないのにケチャップのボトルを逆さにしてオムライスの上にLOVEの文字と大きなハートマークの真ん中に矢を描いた。
「はい、出来上がり~」とリイが満面の笑顔で言う。
「それでは今から私たち3人が、もっと美味しくなるように特別な魔法を掛けちゃいます」
そう言うとオレの前に3人並んで、体を揺らしながら両手でハートマークを作り、声を揃えて魔法の言葉を唱えた。
「LOVE、LOVE、ご主人さまのオムライス、もっと美味しくなーれ、美味しくなーれ、萌え萌えキューン」
その後ろでソニアが、ハートマークを作り一緒に体を揺らしていたのには驚いた。
という事は、このことをメイドたちから聞いていてソニアが許可していたということだ。
オレは前世でメイド喫茶には行ったことなど無いが、メイドたちのサービスは、きっとこんな感じなのだろうと思った。
しかし『美味しくなる魔法』の情報を一体どこで仕入れたのか不思議でならない。
オムライスを食べてみると確かに美味しい。
「ホントだ、とても美味いよ」
オレがそう言うと3人が歓声を上げた。
でも、よく考えると最初から十分に美味そうだったんだけどね。
メイドたちがご主人様のためにと考えてくれたイベントなのだろう。
そう思うと少し頬が緩んだ。
食後の運動を兼ね、温泉の掘削状況を見に行った。
現場ではローレンが待ち構えていた。
「ご苦労さま、温泉の状況はどうだい?」
「昨日から50mほど掘りましたが、まだ温泉は出ておりません」
「そうか、やはり暫くかかりそうだね」
それからオレは敷地内を散策した。
汎用ドロイドたちは、畑や温室内で忙しそうに働いていた。
今日は寝坊したので釣りにも行けなかったな~と思いながら、庭園の湖側にあるインフィニティプールまで来てみた。
インフィニティプールは湖と一体化して見えるように設計されたプールであるが、右端には小さなプールバーがあり、そこで軽食やお酒が楽しめるようになっている。
そうだ、午後からはプールサイドでまったりするのも良いな。
というわけで、オレは水着に着替えてプールサイドでまったりすることにした。
プールサイドの真ん中でリクライニングチェアを倒し、大きなパラソルの下で本を読んだ。
異世界宅配便で届いた私物の中の1冊だ。
読み掛けだったのだが、この世界に来ても続きを読めるのがとても嬉しい。
今日は実にリゾート的な時間の使い方だなぁと思う。
黙って本を読んでいると太陽がジリジリと照りつける。
そして、いよいよ暑くなってきたら、プールに飛び込んでクールダウンだ。
泳ぎは得意な方なのだ。
オレがプールの端から端まで何往復かして水中で休んでいると、プールサイドにメイドが近寄ってきた。
「ご主人さま、何かお飲みになられますか?」
そう聞いてきたメイドのネームプレートを見ると「リア」と書いてあった。
長い黒髪のポニーテールで優しい微笑みを湛える癒やし系の美少女だ。
「それじゃあ、ビールでもいただこうかな」
「はい、それでは、申し訳ありませんが、プールバーまでお越しください」
リアの言葉に従い、プールバーへとゆっくりと泳いでいった。
プールバーには既にリアが待機しており、オレはプールの中からニョキっと生えたスツールに腰掛けた。
「ご主人様、お待たせしました、生ビールでございます」
「ありがとう、リア」
そう言うと泡3液体7の黄金比率で注がれた生ビールを喉に一気に流し込んだ。
「くあ~~、溜まらん!」
オレが奇声を発すると、そのリアクションが面白かったのか、傍で見ていたリアが笑い転げた。
「え、そんなに可笑しいかい?」
オレは笑いながらそう言った。
因みに今は夏で気温は約30℃、しかも適度な運動の後、ビールが最高に美味い条件が揃っているのだ。
「ご主人様がそんなに美味しそうにビールをお飲みになられるなんて」とリアはまだ笑っている
どうやら、ツボにハマったようだ。
箸が転んでも可笑しい年頃と言う言葉があるが、今のリアは、まさにその状態らしい。
なんだか、こっちまで可笑しくなってきた。
「ちょっと、リア笑いすぎじゃない?」
「も、申し訳ありません、ご主人様」
リアは涙目になりながら、まだ少し笑っている。
美少女が笑っているのを眺めるのは、けっして悪い気はしない。
そしてリアが笑う度にポニーテールが左右に揺れるのを見ると、それに『萌える』のだ。
「生ビール美味いな~、もう一杯貰おうか」
オレがそう言うと、リアは急に真面目な顔付きになった。
「かしこまりました、ご主人様」と言って見事な手つきでビアサーバーからビールを注いで見せた。
「ビールとオツマミのソーセージです」
いつの間に茹でたのか、熱々のソーセージを3本サービスしてくれた。
因みにビールが入っている樽は5リッター程度の小さなもので、冷蔵庫でそのまま冷やせるサイズだ。
この世界に冷蔵庫は無かったはずであるが、ここには当たり前のようにある。
ついでに言えば、電気も使えるし、電化製品もある。
ソニアによると電気は水力、風力、地熱の3つの方法で発電されており、環境に優しいエコなエネルギーなのだ。
このプールから見る湖の風景、振り返って眺める山の景色、ガーデンテラスからの眺め、どれも素晴らしく、まさにリゾートといった感じだ。
2杯目のビールを流し込み「く~、美味い!!」と言うと、それを見てまたリアが笑い転げる。
どうやらリアは笑い上戸らしい。
「リアみたいな美少女を見ながら、ビールが飲めるなんてオレはホントに幸せだよ」
「ご主人様、褒めても何も出ませんよ~」
リアはそう言いながら笑った。
「いやホントに、この生ビールは美味かったし、リアも可愛くて美人だし最高だよ」
「またプールに来たら生ビール注いで欲しいな」
そう言うとリアは頬を赤らめ、はにかみながら言った
「はい、かしこまりました、ご主人様」
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