目覚めると広い部屋に一人、ベッドで寝ていた。
そうか、ここは異世界なんだと改めて思った。
ベッドから起き上がると、ドアがノックされ、メイド長のソニアが入ってきた。
え、どこかで見てたのか?
「ご主人さま、おはようございます」
「今日は、とても良い天気ですので、窓から外の景色をご覧下さい」
そう言うとソニアは扇形の窓に掛かっていたカーテンを開けた。
外は快晴で朝の眩しい光が差し込んで来た。
「どうぞこちらへ」
ソニアに促され、窓際まで行ってみると、眼下には素晴らしい湖の眺めが広がっていた。
エメラルドグリーンの湖面に、朝日が反射してキラキラと光っていた。
昨日は全く気付かなかったが、この館は湖畔に突き出した半島に建っていたのだ。
「凄い、絶景だね」
「昨日はお疲れのご様子で、熟睡されてましたので、夕食もお声掛けは控えさせていただきました」
「そうか、そんなに寝たんだ」
この世界では会社に行かなくていいし、何時間寝ようが誰からも何も言われない。
「隣の部屋に朝食の用意が出来ています」
「その前に、こちらでお着替え下さい」
ソニアは備え付けのクローゼットから、衣服を取り出してきた。
上下とも洒落たデザインでサイズはオレにぴったり。
とても軽くて着心地も抜群だが、素材は何だろう。
着替え終わってから自分の姿を鏡で見て驚いた。
そこには、前世より一回り若いオレがいたからだ。
ソニアによると年齢は18歳で身長は180cmだそうだ。
前世より、やや整った目鼻立ちで髪の色は黒っぽい茶色、目の色は黒。
確かに女神に若返りをリクエストしたけど、その通りにしてくれるとは、嬉しくて思わずニヤけた。
寝室の隣はダイニングになっており、窓際にテーブルが配置されていた。
真っ白なテーブルクロスが敷かれたテーブルには窓に向かって椅子が一つ。
眼前に湖の絶景が広がり、食事をしながら風景が楽しめると言う趣向だ。
椅子に座り、湖の美しさに目を奪われているとソニアが朝食を運んできた。
朝食はパスタにベーコンエッグ、サラダ、スープ、そして淹れたてのコーヒーである。
朝からパスタ?と思うかも知れないが、オレは断然朝からパスタ派だ。
素材、温度、味、どれを取っても申し分ないほどハイレベルで美味い朝食だった。
昨日の昼食も美味しかったが、朝食でこのレベルなら夕食もまた期待できそうだ。
湖を眺めながら、食後のコーヒーを楽しんでいるとローレンがやってきた。
「カイト様、お早うございます」
「早速ですが、専属メイドをご紹介させていただきます」
「ご主人さま、専属メイドのリナと申します、どうぞ宜しくお願い致します」
細身で背中までの長いポニーテールが左右に揺れるリナはオレ好みで、可愛い妹タイプの美少女だった。
「専属メイドのルナと申します、ご主人様どうぞ宜しくお願いします」
ルナは微笑みながら、ウィンクしてきた。
肩までの金髪で見事なプロポーションのルナは、明るい性格と爽やかな色気でオレを惑わすセクシー系美少女だ。
「専属メイドのレナでございます」
「ご主人様どうぞ宜しくお願い致します」と深々と頭を下げた。
レナは優等生タイプで真面目な性格のようで、顔立ちもオレ好みの美少女だ。
専属メイドは16歳から18歳で、アイドル顔負けの可愛さ、しかもスタイルも申し分なしなのだ。
メイド服効果で更に可愛さアップ、オレはメイドフェチじゃ無いけど萌えるわ~。
妄想が膨らんで思わずニヤついてしまった。
ソニアを含め、これまでじっくり見たのは4人だけだが、メイドロイドと言っても容姿や性格は一人一人違うようだ。
36名いると言うメイドロイド、他に33名もいるのだから、しばらくは見るだけでも楽しめそうだ。
ローレンによると、この3人の専属メイドは朝から晩まで、付きっきりでオレの世話をしてくれる、まさに専属メイドなのである。
「宜しければ館内をご案内致します」
ローレンは先に立って館の中を案内してくれた。
オレの後ろには、ソニアと3人の専属メイドが後に続いた。
「8階は、この館の最上階で、ご主人さまの寝室とリビング、ダイニング、書斎、娯楽室、バスルームがございます」
「屋上にはドーム型のペントハウスとジャグジーバス、空中庭園がございます」
「ペントハウス?、そんなものまであるんだ」
オレはローレンの後について屋上のペントハウスの階段を上がった。
「ペントハウスのドームは、透過率を変えることで透明にも半透明にもできます」
「晴れている日は透明にして、ドーム内から星を眺めることも可能でございます」
「ベッドもございますので、ここでお休みいただくことも可能です」
「ほ~、それは楽しみだ」
「ドームは開閉できますし、ジャグジーバスも付いておりますので、お風呂に入りながらお酒を楽しむことも出来ます」
「この館はご主人さまの専用スペースを除き、27の客室がございます」
「他に3つの離れがあり、それぞれ趣向を凝らした作りになっております」
「そりゃ凄いや、一人で住むには広すぎるね」
「仰る通りでございます」
オレはローレンについて各階を見て歩いた。
館内には100人ほどの宴会も出来そうなメインホールにジム、大浴場、図書室、娯楽室、売店、エントランスには豪華なシャンデリアとフロントまであった。
その他にバックヤードとメイド達の部屋があるそうだ。
「外も見てみたいけど、いいかな」
「かしこまりました、それではまず庭園にご案内いたします」
1階のエントランスを出ると館を中心として広い庭園があり、色鮮やかな花が咲き乱れ、全面ガラス貼りの立派な温室まであった。
後ろを振り向くと、そこには広い畑が広がり、その奥には豊かな森が、更にその先には標高1888mのミラバス山がそびえていた。
登場人物紹介
【ソニア】
カイトの使用人、メイド長としてメイドチーム36名を統括
20代前半、知性を感じさせる黒髪の美女
女神が遣わしたメイドロイド(ヒューマノイドタイプのアンドロイド)
館内の雑事、業務全般とカイトの警護も担当
【ローレン】
カイトの使用人、侍従長、ロマンスグレーの紳士、館や領地の維持管理を統括
50代前半、ビシッと決めた執事服姿
女神が遣わしたヒューマノイドタイプのアンドロイド
読み終わったら、ポイントを付けましょう!