「カイトさま~」
後ろからオレの名前を呼ぶ声がする。
振り返るとトリンが立っていた。
「温泉、一緒に入っていいですか~?」
「オレはいいけど、トリンは恥ずかしくないの?」
「何言ってるんですか、毎日一緒に寝てる中じゃないですか~」
「誤解されそうなこと言ってんじゃないよ」
「だって本当の事だから…」と言って笑った。
既に温泉に入る準備していたのか、トリンが小走りでやってきて、ドボンと音を立て温泉に飛び込んだ。
「おいおい、お湯、掛かったじゃないか」
「ごめんなさい、こうしないと恥ずかしくて入れなかったんです」
「やっぱり恥ずかしいじゃん」
そう言うとトリンは、笑ってごまかした。
「ご主人さま~」とまた声がした。
振り返るとメイドたちが、こちらを見て言った。
「露天風呂、ご一緒しても宜しいですか?」
「あ~、いいよ、入りたいなら入っておいで」
そう言うとメイドたちが団体で12人、それとソニアも一緒に入ってきた。
「お邪魔しまーす」
そう言って恥ずかしげもなく、何処も隠さず堂々と温泉に浸かった。
「メイドチームA全員で温泉入りに来ました~」とレナが代表して言った。
「ご主人さま、私たちも温泉に入れるようにして下さって、ありがとうございます」
「ありがとうございまーす」とメイドたち全員が声を揃えて言った。
露天風呂にはトリンとメイドたち13人の合計14人、対する男はオレ1人。
湯船に浸かっているので見えないが、胸の膨らみは十分に確認できる。
こうして見てみると実に壮観だ。
いずれ劣らぬ美少女揃い、しかもプロポーション抜群の美女たちに囲まれて、これぞまさにハーレムだ。
「私たち、みんなで決めたんですが、お仕事があるのでメイドが温泉に入れる時間は夜8時以降にしました」
「今日だけ例外で~す」とレナがオレに報告した。
「了解、分かったよ」
と言うことは、夜8時以降に来れば、美少女だらけって言うことか。
φ(. .)メモメモ。
この露天風呂は広めに造ったから、普通に入れば20人、少し詰めれば30人は入れるはずだ。
仕事中は、私語をほとんど話さないメイドたちだが、今は勤務時間外なので、よく喋る。
こうして見るとメイドロイドも人間の年相応の娘と何ら変わらないように思える。
今日は普段バックヤードで仕事をしていて、じっくりと見たり話したりできない娘も来ているので、余計新鮮に感じる。
今いるのがメイドチームAっていう事は、この前プールバーでオレに生ビールを注いでくれた『リア』もいるのかな?
リアは長い黒髪のポニーテールで、静かに微笑む癒やし系の美少女だが、この前会った時から、気になっていたのだ。
リアを探すと、すぐに見つけられたので、近寄って話しかけてみる。
「リア、この前はプールバーでビール注いでくれてありがとう」
「注ぎ方が上手だったから、とても美味しかったよ」
「お褒めいただき、ありがとうございます」
「ぜひ、またいらして下さい」
「美味しいビールと熱々のソーセージをサービスさせていただきますから」
「リアみたいな専属メイドじゃない娘とは、なかなかじっくり話す機会が無いからね」
「ここには普段会えない娘も来るし、露天風呂は良い親睦の場として使えるかもね」
これがホントの「裸の付き合い」ってやつか。
オレとリアの話を聞いていたソニアが口を挟んできた。
「ご主人さま、お話中のところ、失礼致します」
「実はまだ、お話してなかったのですが、専属メイドは1ヶ月単位でローテーションしますので、あと1週間で別のメイドに交代致します」
「え~、そうなんだ、それは知らなかった」
「全部で12組おりますので、1年の間にメイド全員がお世話させていただくことになります」
そうかメイドは全部で36人いるから、毎月3人ずつ交代していくと1年でちょうど一周するのか。
「ちなみに来月の専属メイドはリア、ルイ、レイでございます」
「え、マジか」
「来月からリアが専属とは、楽しみだ」
「ご主人さま~、お背中流させて下さい」
そう言って、あまり見かけない美少女がオレの方に寄ってきた。
「ありがとう、せっかくだし、お願いしようかな」
これぞ裸の付き合いの醍醐味っていうやつか。
オレは洗い場で椅子に腰掛けて、背中を洗ってもらった。
オレは黙って洗って貰うのに専念していたが、無意識なのか背中に何か柔らかいモノが当たるのだ。
どう考えても、それは女性の胸の膨らみ以外考えられない。
反射的にオレの男の本能が反応してしまう。
「今度は前洗いますね~」と言って、その娘は前を洗おうとするのたが、この状況は無理がある。
「ご主人さま~、洗うだけですから、遠慮しなくてもいいんですよ~」
「キミの好意は、とてもありがたいんだけど、緊急事態だから失礼するよ」
そう言うとオレは逃げるように露天風呂を出た。
嬉しい状況ではあるが、流石にあんなにたくさんのメイドがいると、オレの方が恥ずかしいくなる。
そして、そのまま自室に戻った。
部屋でベッドに横たわり、本を読んで煩悩を沈めているとトリンが帰ってきた。
そして何も言わず、ドサっとオレの横にダイブしてきた。
「カイトさま~、なんであんなに早く帰っちゃったんですか~」
「もっとゆっくり温泉に浸かってくれば良かったのに~」
「いや、トリンもあの状況見てただろ」
「あんな事されたら、男は色々とヤバい状態になるんだって」
「やばい状態ですか?」
「いやトリンには、分からないかも知れないけどね」
「露天風呂にたくさんの女の子がオレと一緒に入ってて、みんなキレイで可愛くて、見てるだけで興奮しちゃうんだよ」
「あ~、なるほど、男の生理っていうやつですね」
「トリンもそのくらい分かりますよー」
「なんだよ、分かるんかい」
「もうカイト様ったら、恥ずかしがり屋さんなんですね」
「さすがに14対1のあの状況は、ちょっと恥ずかしかったかもな」
「男の生理、トリンが鎮めて差し上げましょうか?」
へ、今なんて言った?
トリンが鎮めてくれる?
たしかに可愛いし、美少女だし、性格もいいし、好きだけど。
「いや、好きでもない男にそんな事したくないだろうし、もし義理なら遠慮しとくよ」
「義理じゃないですよー」
「だってトリン、カイト様のこと好きだもん」
トリンはそう言うと、オレにキスしてきた。
「この城に来てからカイト様といつも一緒で、いつの間にか好きになっちゃったみたいです」
これって、もしかして女神がくれた英知の指輪のスキルが効いているってことかも。
このスキル、メイドロイドには効果がないみたいだけど、トリンはこの城に来た初めての人間だから、スキルが効いたのかも知れない。
トリン可愛いなーって、ずっと思ってたし、会ってから約2週間、そろそろ効果が現れてもオカシクない。
「オ、オレもトリンのこと好きだよ」
咄嗟にそう答えていた。
「うれしい」
頬を赤らめ、はにかんでいるトリンが、またカワイイ。
「それじゃ、トリンが楽にしてあげますね」
「一応そういう知識はあるんです」
なんでか知らないが、そのような知識はあるらしい。
「どこで、そんな知識仕入れたんだ?」
「内緒です」と恥ずかしそうにいう。
「灯り暗くして下さい」とオレの耳元で囁いた。
オレはベッドサイドの灯りを落とし、トリンを優しく抱きよせた。
♥ ♥ ♥ ♥ ♥
次の朝、起きると隣で頬杖突きながら、トリンがじっとオレの顔を覗き込んでいた。
「カイトさま、お早うございます、昨日はお疲れ様でした」
そう言って人懐っこい笑顔でキスしてきた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!