「しょうらいの ゆめ」 1ねん3くみ かどの たくや
ぼくは、大きくなったら、おじいちゃんみたいになりたいです。
なぜそう思ったのかというと、おじいちゃんはすごくえらくて、まわりの人たちがおじいちゃんの言うことを、なんでもきいてくれるからです。
たとえば、おじいちゃんとぼくが、『まんが』を買いに行ったときのことです。ぼくはそのとき、どうしてもよみたい『まんが』があったんですが、ほんやに行ったら店いんさんに売り切れだといわれました。
ぼくはすごくかなしくて、泣きそうになってしまいましたが、おじいちゃんが店いんさんに大きなこえでいいました。
「おれのまごはあの『まんが』がほしいっていってるのに、なんで売り切れなんだよ!」
ぼくは、おじいちゃんの大ごえにおどろいて、おもわずころんでしまいました。そしてついに泣いてしまいました。それを見たおじいちゃんは、また大きなこえでいいました。
「てめえおれのまごを泣かせやがったな! 今すぐおれとまごに『どげざ』しろ!」
ぼくが泣いたのは、おじいちゃんの大ごえにおどろいてころんだからなのであって、店いんさんのせいではなかったのですが、ぼくはそれをおじいちゃんにいえませんでした。それに、『どげざ』というのがなんのことなのかわからなかったので、ぼくはふしぎに思いました。
店いんさんはなんどもおじいちゃんとぼくにあたまを下げてきましたが、おじいちゃんは店いんさんをゆるしませんでした。
「『どげざ』しろっていってんだろ! てめえ『にほんご』がつうじねえのか!? 『にほんじん』じゃねえのか!? ああ!?」
おじいちゃんはものすごくこわいかおで、店いんさんをにらみつけていました。店いんさんは泣きそうになっていました。しばらくすると、ほんやのおくからべつの店いんさんがきました。さっきの店いんさんよりおじさんでした。
おじいちゃんはおじさんの店いんさんを見ていいました。
「おまえ、『てんちょう』か!? この店は店いんにどういう『きょういく』してんだよ!」
おじいちゃんが大ごえを出すと、おじさんの店いんさんはさっきの店いんさんとおなじように、ペコペコとあたまを下げました。だけどおじいちゃんはふたりの店いんさんにいいました。
「おまえら、おれのまごを泣かせたんだから、いますぐ『どげざ』して、売り切れの『まんが』いますぐとりよせろ!」
おじいちゃんがそういうと、ふたりの店いんさんはすわりこんで、『ゆか』にあたまをつけてあやまってきました。おじいちゃんはそれを見て、まんぞくそうにわらいました。たぶんこれが『どげざ』なんだなと思いました。
おじいちゃんはそのあと、ぼくのかおを見ながらいいました。
「たくや、ちょっとまってろ。すぐにこのおじさんたちがおまえのほしい『まんが』もってくるからな」
ぼくは、おじいちゃんの言うことがほんとうだと思いました。なぜなら、店いんさんたちがあわてたようすでどこかに『でんわ』をしていたからです。
30ふんくらいして、ほんとうに店いんさんはぼくのほしい『まんが』をもってきました。それを見たおじいちゃんは言いました。
「おい、ここまでおれたちに『めいわく』かけたんだから、とうぜんこの『まんが』は『ただ』だろうな?」
おじいちゃんがなにを言っているのかよくわかりませんでしたが、おじいちゃんが言ったことに対して、店いんさんはこまったかおをしていました。それを見て、おじいちゃんはいいました。
「てめえ、ここまでおれとまごに『めいわく』かけて、かねはらえっていうのか!?」
店いんさんはまた泣きそうになっていましたが、さっきのおじさんの店いんさんがおじいちゃんになにかをいって、おじいちゃんはむずかしそうなかおをしたあとにいいました。
「ふん、ならそれでいいよ」
そういうと、おじいちゃんは『さいふ』をとりだして『おかね』を店いんさんにわたしました。たぶん、『まんが』を買うための『おかね』です。だけどそのあとに、おじいちゃんは店いんさんからなにかをうけとりました。
「さ、たくや。『まんが』買ったからもう行こうな」
おじいちゃんはぼくにやさしいかおで言うと、いっしょにほんやから出ました。
しかし、ぼくはほんやから出るときに、店いんさんが小さなこえでなにか言ったのをききました。
「『ろうがい』め……」
なんのことかわかりませんでしたが、たぶん『ろうがい』というのはおじいちゃんのことを言ってるのだと思いました。
ほんやからのかえりみち、ぼくはおじいちゃんになにをうけとったのかききました。
「これは、あのほんやさんでつかえる、『くーぽん』だよ」
『くーぽん』というのがなにかわからなかったのでおじいちゃんにきくと、『おかね』をはらわずに『まんが』を買うことができる紙だと言いました。ぼくは、『くーぽん』ってすごいと思いました。
ぼくは、おじいちゃんに、なんで店いんさんがおじいちゃんの言うことをきいてくれたのかをききました。
「それは、店いんさんたちがわるいことをしたからなんだけど、ふつうの人が言っても店いんさんたちは言うこときいてくれないんだ。だけど、おじいちゃんみたいなちゃんとした『おとな』がちゃんとした『ことば』で言えば、店いんさんは言うこときいてくれるんだよ」
ぼくはさっき、『くーぽん』ってすごいと思いましたが、それ以上におじいちゃんがすごいと思いました。だって、おじいちゃんはただ大ごえをだしただけなのに、店いんさんから『くーぽん』をもらうことができるくらい、えらいんです。だからおじいちゃんはすごいと思いました。
だからぼくは、しょうらい、おじいちゃんみたいな、りっぱな『ろうがい』になりたいと思いました。
おわり。
※※※
ぼくが、「しょうらいの ゆめ」の作文をよんだ『じゅぎょう』からなん日かたった日、おじいちゃんは学校にきました。
なんでおじいちゃんが学校に来たのかわかりませんでしたが、おもしろそうだったので、ぼくはこっそりおじいちゃんのあとをついていきました。
おじいちゃんは、ぼくのたんにんの先生と話をしていました。そして、たんにんの先生はおじいちゃんにあたまを下げていました。
「あんた、おれのまごにあんな作文かかせるなんて、どういう『きょういく』してんだ!」
おじいちゃんがなんでおこっているのかわかりませんでしたが、ぼくの作文のことについておこっているようでした。
ぼくは、おじいちゃんをおこらせるような作文を書いてしまったと思い、かなしいきもちになりました。
だけど、おじいちゃんはやっぱり、大ごえを出して、たんにんの先生にも言うことをきかせるくらいえらいんだと思いました。
だからやっぱり、ぼくは『ろうがい』になりたい。そう思いました。
完
読み終わったら、ポイントを付けましょう!