【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第9話(3)小浜にて

公開日時: 2023年11月19日(日) 09:54
文字数:2,020

                  ♢

 福井県の小浜市の某所には、三丸率いる福井隊と、夜塚率いる石川隊がいた。

「いや~どうもお招きいただき光栄で~す」

「この間はこちらがそちらに赴いたわけだからな、その礼みたいなものだ」

「おお、訓練後には美味しい海鮮料理とか期待出来るのかな~?」

「食べる気力が残っていれば良いがな……」

 三丸がニヤリと笑う。

「おお~結構スパルタで行く感じ?」

「ある程度厳しくいかねば意味があるまい」

「まあ、皆若さがあるから大丈夫だろうね~」

「うん?」

 三丸が首を傾げる。夜塚が地面を指差す。

「だって、ここは『若狭国』だし!」

「……意味は合っているのが腹立つな」

「え⁉ 適当に言ったのに⁉」

「あくまでも伝承だがな」

「へ~へ~」

 夜塚が顎をさすりながら頷く。

「……ではまず……宇田川花隊員! 宇田川竜隊員! 星野隊員!」

「「「はっ!」」」

「まずは貴様らでツインアタックを行え! 仮想イレギュラーは夜塚隊長だ!」

「ね~これってボクがやらなきゃダメ~?」

「遠慮は要らんぞ。それでは始め!」

 夜塚の声を無視して、三丸が指示をする。花が月の頭にカメラとマイクを装着させる。

「竜、どう?」

「も、問題ないよ」

「それではお願いします」

「はい!」

 月が高く飛び上がる。花と竜がカメラを確認しながら指示を出す。

「……夜塚隊長は二時の方向の遮蔽物に身を隠した模様!」

「遮蔽物の中心を射抜けば、移動する可能性は極めて高いです。移動するのは東側!」

「はっ!」

「!」

「『空之双眼』……空中から索敵・分析、さらに攻撃を同時に行えるってわけか」

「厄介だな。夜塚隊長も面食らっているぜ。それでもかわしていやがるけど……」

 蘭と慶が揃って感心する。

「それでは次に、志波田隊員! 星野隊員!」

「おっしゃ!」

「はっ!」

「始めろ……」

「よっしゃ! 行くぞ!」

「はい……」

「どうした⁉」

「い、いや、本当に良いんですか?」

「構わねえよ!」

「そ、それでは! 3、2、1、GO!」

 月が蘭を抱えて、高く飛び上がる。

「よし、離せ!」

「は、はい!」

「おらあっ!」

「‼」

「『鬼之爆弾』……自らを勢いよく投下させるとは……」

「……自分で回転をつけてさらに加速させてやがる。大した度胸だぜ」

 分析する竜の横で、慶が感嘆の声を上げる。

「次に……氷刃隊員! 古前田隊員!」

「は、はい……」

「うっす!」

「……始めろ」

「え、ええっと……」

「あの鬼ツインテは黒部ダムでお前さんの銃弾を金棒で打っていたよな?」

「え、ええ、そうですね……」

「そうか……」

 陸人の答えに慶がニヤっと笑う。陸人が首を傾げる。

「あ、あの……?」

「オイラも逆転の発想だ! おらあっ!」

「! どえええっ⁉」

 慶が槍に陸人の隊服を絡ませて、ぐるぐると回って、陸人を遠くに投げ飛ばす。

「槍投げならぬ人投げ! これで相手の虚を突くゼロ距離射撃が可能だ! ぶっ放せ!」

「目、目が回る~!」

「『遠投射撃』……確かに相手の虚は突けそうだ。氷刃隊員の正確な射撃も見事……」

「槍投げというか、あれではハンマー投げですけどね……」

 感心する大海の横で花が呆れ気味に目を細める。

「次は……宇田川花隊員! 宇田川竜隊員! 古前田隊員!」

「「はっ!」」

「ういっす!」

「……それでは始めろ」

「敵は十時の方向にいます……」

 花が夜塚を指し示す。

「ああ、それは見れば分かるが……」

「竜、相手の分析をお願い……」

「う、うん……訓練だからかどこか油断しています、そこを上手く突ければ……」

「い、いや、実力差はどうすんだよ⁉」

「そこはお寺生まれならではの法力みたいなのを駆使して頂いて……」

「生憎オイラにはそういうのが乏しいんだよ! だからこうして槍を使ってだな!」

 花が慶の前に進み出て、上目遣いで告げる。

「大丈夫、あなたなら、きっと土壇場で覚醒します……信じています」

「! 女の子にそう言われたら、やるっきゃねえよな!」

「『分析希望』……分析は出来るだけして、後は古前田隊員の意外性に賭けると……」

「で、出たとこ勝負過ぎる気が……なんとかなっているけど」

 月の呟きと、慶の奮戦に陸人が困惑した反応をする。

「さて、次は……志波田隊員! 疾風隊員!」

「おっしゃあ!」

「はい!」

「良い返事だな……始めろ」

「疾風隊員! アタイに任せろ!」

「お任せします!」

「ノー、ノータイムで答えたな……躊躇ってもんが無えのか?」

「志波田隊員を信頼しております!」

「へへっ……それならそこで立ってろ……おらおらっ!」

「‼」

 蘭が金棒を素早く振り回して起こした風に乗って、大海が飛び上がる。

「風の勢いで相手をやっちまえ! 『鬼風之刃』だ!」

「うおおっ!」

「よっと! なかなか良い攻撃だったよ、それじゃあ各自連携を磨いておいてくれる?」

 大海の攻撃をなんとかいなした夜塚は皆に声をかけた後、三丸に歩み寄る。

「残りの組み合わせは温存か? 試せる内に試しておいた方が良いと思うが……」

「なんとなくだけど、手の内は全てさらけ出さない方が良い気がする。なんとなくだけどね」

 夜塚が三丸に対して、ウインクする。

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