【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第6話(2)各々の自己紹介

公開日時: 2023年10月25日(水) 02:24
更新日時: 2023年10月25日(水) 02:30
文字数:1,680

「はあ、はあ……」

「はあ……」

 陸人と竜がなんとか立ち上がり、肩で息をする。

「休憩は十分だな?」

「い、いや、今日はもう上がって良いですか?」

「良いわけがないだろう。これからが本番だ」

「そ、そんな……」

「せ、殺生な……」

 三丸の言葉に陸人たちは愕然とする。

「ゲートバスタ―ズの隊員ならば、これくらい普通だろう」

「い、いや、俺は射撃専門ですから……」

「ぼ、ぼくは分析班です……」

「それがどうした」

「ど、どうしたって……」

「一度戦場に出れば、そんなことは通用しないぞ。イレギュラーどもは聞く耳など持ってはくれんからな」

「む……」

「大体、戦闘が長期戦に及ぶケースも想定出来る。体力が尽きましたと言って、素直に首を差し出すつもりか?」

「むう……」

「見てみろ、女子二人はいたって涼しい顔だぞ?」

「……」

「………」

 三丸がマラソンを走り終えた花と蘭を指し示す。

「う、ううむ……」

「男として情けなくはないのか?」

「そ、それは……」

「もう少し根性を見せることだな」

「お、お言葉ですが……」

「うん?」

「『適材適所』という言葉もあります……」

「まず適材になってから抜かせ」

「うぐっ……」

 三丸の返す刀に陸人は黙り込むしかなかった。

「ス、スパルタだなあ……」

 天空が小声で呟く。

「……それじゃあ、顔合わせですし、自己紹介と行きましょうか」

「うむ」

「オレは深海破竹、富山の第四部隊の隊長です。よろしくお願いします……」

「ワタシは三丸松、福井の第四部隊の隊長だ。よろしく頼む」

「富山側から自己紹介しましょうか。それじゃあ雷電隊員から……」

 深海が天空を促す。

「は~い♪ 雷電天空で~す、よろしく~♪」

「!」

「痛っ⁉ な、なんで足踏むのさ、雪っぺ~」

「もっとしゃんとしなさいよ!」

「……見た目通り、チャラいですね……」

「いや、分からんぞ……」

「え?」

 花が蘭の方を見る。

「ああいうのが、戦場において高い実力を発揮するもんだ……夜塚隊長のようにな」

「ああ……似ているといえばそんな感じもします……」

 花が納得したように頷く。

「宙山雪です。どうぞよろしくお願いします」

「うん……どうだい、竜くん?」

 陸人が竜に話しかける。花が聞き耳を立てて呟く。

「珍しく真剣な表情……」

「……ポニーテールはいつの時代も正義!」

「それな!」

「‼」

「あだっ⁉」

「あでっ⁉」

 花が陸人と竜の頭を小突く。

「な、なんだよ、急に頭を殴ってきて~」

「真面目に聞きなさい……!」

「佐々美葉です。よろしく……」

「……どう思う?」

「巫女さんは神秘!」

「それ……でっ⁉」

「真面目に聞け……もう一度マラソン走りたいか?」

「い、いいえ……!」

 蘭に睨まれ、陸人と竜が震え上がる。

「それじゃあこっちの紹介だな、氷刃隊員から」

「は、はい、氷刃陸人です! よ、よろしくお願いします!」

「なんか泣いている?」

 雪が首を傾げる。天空が首をすくめる。

「僕たちと会えての嬉し涙じゃないかな?」

「絶対に違うと思うわ……」

「宇田川花です。よろしくお願いします」

「宇田川竜です。よ、よろしくお願いします」

「双子ちゃんだ~」

「え、ええ……」

 天空の反応に花がやや面喰らう。

「どっちが年上?」

「ワタクシです」

「だろうね」

「そうでしょうね」

「秒で分かった」

 花の返答に天空たち三人が揃って頷く。竜が声を上げる。

「ええっ⁉ 皆さんなんかちょっと酷くないですか⁉」

「そのぶっちぎりの低評価は訓練で覆せ……」

「隊長! ぶ、ぶっちぎりって!」

「最後は……」

「はい、志波田蘭です! よろしく!」

 蘭の声が響き渡る。

「おほ~すごい迫力♪」

「気合のノリが良いな。鬼と呼ばれるだけはあるということか……」

 笑顔の天空の横で、葉がうんうんと頷く。蘭がそこに近づく。

「鬼退治はさせねえぞ?」

「……なにか勘違いされておられるようだが、今日は合同訓練だ。模擬戦ではない」

「ふん……」

「それでは……」

「ああ、合同訓練ポイントに移動するぞ」

 深海に促され、三丸が指示を出す。

「え? ここじゃないんですか?」

「基地内じゃつまらんだろう? どうしてもマラソン希望なら考えるが……」

「いいえ! 移動しましょう! 今すぐ!」

 天空がしゃきしゃきっと動く。

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