【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第11話(4)突然の……

公開日時: 2023年12月8日(金) 14:32
文字数:1,707

「ブオオッ!」

「戦闘機の影が飛んできます!」

 雪が声を上げる。

「ちっ……」

「佐々美隊員、ちょっと待ってください」

 前に進み出ようとする葉を深海が制す。

「はい……?」

「ここは任せてもらいます……!」

「ブオオッ⁉」

 戦闘機の影が数機、コントロールを失い、地面に墜落して、霧消する。

「こ、これは……⁉」

「コックピットにハッキングして、計器類をいじらせてもらいました……」

 自らの側頭部を抑えながら、深海が雪の問いに答える。

「ブオオッ‼」

「まだ何機か残っています!」

 葉が上空を指差す。

「ちいっ、さすがに数が多いですね……」

 深海が舌打ちして呟く。

「宙山隊員! ここは自分たちが行くぞ!」

「ええ!」

 雪が葉の呼びかけに応える。

「待ってください! お二人の力は温存しておいてください……」

「し、しかし……」

「で、ですが……」

 葉と雪が戸惑う。

「大丈夫です! 雷電隊員!」

 深海が自らの手首に着けたブレスレットを見せる。天空が驚く。

「それは⁉」

「行きますよ!」

「おっしゃあ!」

「……今です! 拳を振るって!」

「そらあっ!」

「ブオオオッ⁉」

 深海が動きを停止させたところに、天空の振るった拳から雷が放たれ、戦闘機の影を撃墜し、霧消させる。深海が満足そうに頷く。

「さながら『超雷撃砲』ですか……」

「シャアッ!」

「巨大ワニの影が数匹、こちらに近づいてきます!」

 花が声を上げる。三丸が手袋を着けながら冷静に応える。

「宇田川花隊員、より正確な報告を……全部で何匹だ?」

「は、はい! 全部で十匹!」

「こちらに向かってきているのは?」

「四匹です!」

「そうか……宇田川竜隊員、どうする?」

 三丸が竜に尋ねる。

「は、はい! やはり脚部を攻撃し、機動力を奪うべきかと!」

「良い分析だ……参考にさせてもらおう。あくまでもだが……」

「あ、あくまでも?」

「はああっ!」

「シャアアッ⁉」

 巨大ワニの影の群れに突っ込んだ三丸が、巨大ワニの影の頭部あたりを次々と殴りつける。強烈な攻撃を食らった巨大ワニの影は吹っ飛んで霧消する。三丸が呟く。

「まずは四匹……」

「ぶ、分析の意味⁉」

「へへっ! 分かりやすくていいぜ!」

 戸惑う竜の横で蘭が笑う。

「シャアアッ!」

「も、もう二匹向かってきています!」

 花が慌てて声を上げる。

「氷刃隊員!」

 三丸が自らの手首に着けたブレスレットを見せる。陸人が驚く。

「そ、それは⁉」

「行くぞ!」

「は、はい!」

「……今だ! 撃て!」

「はい!」

「むん!」

「シャアアッ⁉」

 陸人が銃弾を乱射したところに、三丸が拳を叩き込む。巨大ワニの影は倒れて、霧消する。

「ふん、『弾拳乱撃』といったところか……」

「ははっ、別にツインアタックとか必要ねえんじゃねえの……?」

 蘭の笑いが苦笑に変わる。

「鬼、戦闘機、巨大ワニ、それぞれ四体ずつに減りました!」

 花が皆に報告する。

「ふむ、一隊につき一体として、後は早い者勝ちかな?」

「甘くみないほうが……」

 夜塚に深海が注意する。

「我が隊だけでも十分だ……」

「ははっ、松っちゃんだけの間違いじゃないの?」

 両手の指をポキポキと鳴らす三丸を見て、夜塚が笑う。

「ほ、本当にやってしまいそうだから怖い……」

 深海が小声で呟く。

「……早い者勝ちで良いな?」

「そうだね」

 三丸の問いに夜塚が頷く。

「それは困るねえ……」

「‼」

 三隊と影たちの間に水仙が現れる。蘭が首を傾げる。

「……誰だ?」

「水仙一子さん、ボクらの上司……つまりはこの第四部隊の総責任者だ……」

 夜塚が淡々と呟く。

「へえ、クールビューティーだねえ……」

「そんなことを言っている場合か……!」

 軽口を叩く慶を葉がキッと睨み付ける。

「……困るとはどういうことですか?」

「夜塚、君は分かっているだろう……薄々勘付いていたみたいだからね」

「念のための確認です」

「はっ、念のためね……色々とデータは取れたから、君たちにはそろそろご退場願おうと思っていたんだよ……ふん!」

「グウウ……」

「ブオオ……」

「シャアア……」

「⁉」

 四体ずつ残っていた、鬼と戦闘機とトカゲの影たちが融合して、四体の一回り巨大な影になった。深海が驚愕する。

「じ、人為的に融合させた⁉」

「せっかく結成した部隊だが、ここで消えてもらう……」

 水仙が不敵な笑みを浮かべる。

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