【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第11話(2)陸海空待機中

公開日時: 2023年12月7日(木) 22:12
文字数:1,528

                  ♢

「なんで僕らだけ別室なんだろう?」

 天空が呟く。

「さ、さあ……?」

 陸人が首を傾げる。

「……なにか理由があるのでは?」

 椅子に座って、腕を組みながら目を瞑っていた大海が目を開いて反応する。

「理由って?」

「さあ、そこまでは分かりません。ただ……」

「ただ?」

「なんらかの意味はあるはずです」

「なんらかの意味?」

「ええ」

 大海が頷く。

「意味ってなんだろう?」

 天空が陸人に視線を向ける。

「う、う~ん……?」

 陸人が首をさらに傾げる。天空が大海に尋ねる。

「大海っぴ、何か分かる?」

「大海っぴ⁉」

 大海が面食らう。

「ん? どうかした?」

 天空が首を傾げる。

「い、いえ……考えられることは……」

「おっ、なになに?」

 天空が身を乗り出す。

「私たちは経験者だということです」

「……経験者?」

 天空が顎に手を当てる。

「ええ、トリニティアタックの」

「ああ、そっちの経験?」

「? そっちって、どっちだと思ったのですか?」

 大海が不思議そうに首を傾げる。天空が手を左右に振る。

「いいや、なんでもないよ……ねえ、陸人っち?」

「い、いや、そこで話を振らないでよ!」

 陸人が戸惑う。

「? とにかく、今回のこの部屋割りを決めたのは隊長のお三方です。なんらかの意味は必ずあるはずです」

「あ、そうなの?」

「そうですよ、ご存知ありませんでしたか?」

「全然ご存知なかったよ。そっか~隊長さんたちが……」

「ふむ……」

 天空と陸人が揃って考え込む。

「どうかしましたか?」

 大海が二人に尋ねる。天空が口を開く。

「大海っぴさ……」

「はい」

「多分だけど……」

「はい……」

「隊長さんたち、そこまで考えてないと思うよ」

「えっ⁉」

 天空の言葉に大海が驚く。

「右に同意……」

「ええっ⁉」

 陸人の呟きに大海がさらに驚く。

「だって、うちの隊長はそういうことに興味なさそうだし……」

 天空が自らの顎をさすりながら話す。

「ふ、深海隊長が?」

「うん、自分の研究とか、そういう方が大事だと思うよ」

「み、三丸隊長は?」

 大海が陸人に尋ねる。

「何も考えてない」

「断言⁉」

「はっきり言って脳筋だし」

「脳筋⁉」

「あ、こ、これは言わないでよ! 内緒でお願い!」

 陸人が慌てる。

「ううむ……信じられない……」

「大海っぴ、夜塚隊長のことを考えてみなよ?」

「……確かに何も考えてなさそうですね」

「そうでしょ?」

 大海の返答に天空が笑みを浮かべる。

「では、なおさらのことですが……」

「うん?」

 天空が首を捻る。

「私たちが考えておかなければなりません」

「考えるって……何を?」

 陸人が問う。やや間をおいて、大海が答える。

「……それを考えましょう」

「ええ……」

 陸人が困惑する。

「まあ、暇つぶしにはちょうど良いかもね~」

 天空が後頭部を両手で抑えながら、椅子の背もたれに寄りかかる。

「……とりあえず喫緊の課題は……」

「う、うん……」

 大海の話に陸人が耳を傾ける。

「私たちのトリニティアタックのネーミングに関してです」

「そ、それが喫緊の課題⁉」

「え~『真剣拳波』で良いじゃん~」

 驚く陸人の横で天空が両手を広げる。

「見直しが必要かと……」

「大海っぴはどんな名前が良いの?」

「それはこれから考えますが……」

「陸人っちは? このまま? 見直す?」

「ど、どっちでもいいかな……」

 陸人は素直な思いを口にする。

「ふむ、平行線ですね……」

「こうなったら……」

 大海と天空がそれぞれ両手を重ね、揉み手する。

「「相撲で決める!」」

「ええっ⁉ 相撲⁉ じゃんけんの流れかと……」

 陸人が戸惑う。

「よしっ! 陸人っちも脱いで上半身裸になって」

「な、なんで俺も⁉」

 天空の言葉に陸人がさらに戸惑う。そこに警報が鳴る。

「! ん? メッセージが……石川隊だけ出動せよ……? 失礼!」

「た、助かった……」

 部屋を出る大海の背中を見ながら、陸人が胸をなでおろす。

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