「危険度がSに上昇!」
通信が夜塚たちの下に入る。
「ブエアアアン‼」
巨大な影が咆哮する。夜塚が周囲に声をかける。
「みんな、回避行動を……⁉」
「そういうわけにはいきません!」
雪が力強く答える。
「そうなったらこないだの二の舞だ!」
慶が声を上げる。
「ここは先手必勝だ!」
蘭が叫び、隊員たちが前に進み出る。
「! ふっ、これが若さってやつか……」
夜塚が笑みを浮かべる。
「年寄り臭いこと言うな、巻き込まれる……」
「えっ⁉」
「一緒にしないでもらえます?」
「ええっ⁉」
三丸と深海のつれない態度に夜塚が驚く。
「行くぞ、志波田隊員!」
「いつでもいいぜ!」
葉の呼びかけに蘭が応える。
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「おらあっ!」
「ブエアン!」
「『鬼神之雷』!」
深海が声を上げる。
「先制攻撃が決まったな!」
三丸が拳を握る。
「ブ、ブエア……」
巨大な影がややよろめく。
「どうだ⁉」
葉が様子を伺う。
「ブ、ブエアン!」
巨大な影が体勢をすぐに立て直す。
「ちっ、まだ動けるのかよ!」
蘭が舌打ちする。
「それならば……星野隊員!」
花が月に声をかける。
「ええ! 準備はいいわ!」
月がカメラを設置する。
「お願いします!」
「ええい!」
月が目一杯跳躍し、巨大な影を見下ろす位置にまで到達する。
「竜!」
「映像を確認! 頭部が弱点の可能性は高いと思われる!」
花の呼びかけに竜がすぐさま答える。
「星野隊員! 頭部を集中的に狙ってください!」
「了解!」
花の指示に従い、月が弓矢を連射する。
「ブエアン‼」
月の射った矢を頭部などに食らい、巨大な影は再びよろめく。
「『空之双眼』による的確な攻撃! 効いたか⁉」
三丸が声を上げる。
「ブ、ブエアン‼」
「ま、まだです!」
巨大な影が体勢を立て直そうとしていることに深海は額を抑える。
「しかし……効いてないはずはない……古前田隊員!」
「ああ!」
雪の呼びかけに慶が応じる。
「心臓あたりならば効くはずです! お願いします!」
「突くのは得意中の得意だぜ!」
雪が手を掲げると、慶が巨大な影の懐に一瞬で飛び込み、胸部あたりを槍で突く。
「ブエアン⁉」
巨大な影は後ろに大きくよろめく。
「『魔槍突撃』! 強烈な一撃!」
「一旦戻れ! 古前田隊員!」
声を上げる深海の横で三丸がすかさず指示を出す。
「あらよっと!」
慶が元の位置に戻る。
「ブ、ブエアン⁉」
「ちいっ! 突きが浅かったか⁉」
体勢を立て直す巨大な影を見て、慶は大きく舌打ちする。
「な、なんでやつだ……」
「陸人っち! ビビったら負けだよ!」
「今度は我々が!」
大海と天空、そして陸人が前に進み出る。夜塚が声を上げる。
「ちょっと待った! これを受け取って……」
「こ、これは……ブレスレット?」
「三人とも着けて!」
「は、はい!」
三人は新たなブレスレットを着ける。
「よし……これまたぶっつけだが、三人に賭ける! 手をかざせ!」
大海たちが手をかざす。三人を同じ色の光が包む。
「! こ、これは……?」
陸人が戸惑う。夜塚が深海に問う。
「どうかな、破竹⁉」
「……共振率は極めて高いようです」
「よし! イケるね!」
夜塚が頷く。陸人が頭を抑える。
「なんだ……これイメージが共有できる感じだ……」
「よっしゃ! この思い浮かんだ感じで行こうか!」
「ええっ!」
大海と天空が突っ込み、陸人が銃弾を放つ。大海たちの体と銃弾を眩い光のが包み込み、大きな光の塊になる。
「うおおおおっ!」
「ブ、ブエアアン⁉」
光の塊に貫かれ、巨大な影は霧消する。
「やった! 決まった!」
夜塚が派手なガッツポーズをとる。大海が問う。
「い、今のは……?」
「ツインアタックのアップデート版、『トリニティアタック』さ!」
「ト、トリニティアタック……?」
「そう! あえて名を付けるならば……」
「『真剣拳波』だね!」
「あ! 先を越された! ま、まあ、いいよ、それで……」
天空に先を越され、夜塚は不承不承ながらも頷く。
「ネーミングはともかくとして……トリニティアタックか……強力だな……」
三丸が腕を組む。
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