【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第3話(4)氷刃の如き射撃、そして……

公開日時: 2023年9月22日(金) 17:24
文字数:1,563

「ああ……」

「ひいっ⁉」

 陸人が銃を構えながらビクッとなる。

「……」

「………」

「……脅え過ぎだ」

「す、すみません……」

 陸人が軽く頭を下げる。

「そういえば……」

「ひっ⁉」

 陸人が銃口ごと三丸の方に振り向く。

「ば、馬鹿! 銃をこっちに向けるな!」

「ご、ごめんなさい……!」

「落ち着け……」

「はい……」

「…………」

「……………」

「……落ち着いたか?」

「はい……」

「そうか。出来る限りで構わないが……」

「ええ……」

「木々には傷を付けないようにして欲しい」

「え?」

 陸人が目を丸くする。

「いや、無理を言っているのは百も承知だ……可能な範囲で構わん」

「木々に傷を付けない……」

「そうだ」

 三丸が頷く。

「……そんなことで良いんですか?」

「なに?」

「!」

「ギャッ!」

「……!」

「ウギャッ!」

「……‼」

「グギャッ!」

 陸人が正確無比な射撃で黒い爬虫類たちを射倒してみせた。

「な、なんと……」

「ダ、ダメでしたか?」

「いや、見事だ。精度といい、威力といい申し分ない……まさに氷刃の如き射撃……」

 三丸が感心する。

「ぴ、ぴえええん!」

「ど、どうした⁉」

 急に泣き出した陸人に三丸が驚く。花が説明する。

「あ、緊張の糸が切れたみたいで……反動でこうなってしまうんです」

「そ、そうか……体力面に加えてメンタル面が今後の課題ということだな……」

 花の説明を聞き、三丸が頷く。

「ギャアッ!」

「む!」

 隠れていた爬虫類たちが動き始める。蘭が舌打ちする。

「ちっ、まだいやがったか!」

「すみません、探索が足りませんでした……」

「いや、小型ゆえに見逃すのも止むを得ないかと」

 頭を下げる花を竜がフォローする。三丸が笑う。

「ふっ、姉思いだな……」

「そういった意味では……」

「分かっているさ、危険度は極めて低いだろう?」

「ええ……」

「ギャアアッ!」

「ギャアッ! ギャアッ!」

「……なんだ?」

 蘭が首を傾げる。眼鏡のフレームを抑えながら竜が呟く。

「……巨獣同士で共鳴し合っている?」

「どういうことだ?」

 三丸が竜に問う。

「それはなんとも……!」

「ギャアアアッ‼」

 爬虫類同士が接近し、黒い光に包まれたかと思うと、一匹の巨大な爬虫類に変貌した。

「なっ⁉」

「が、合体⁉」

 蘭と花が驚く。三丸が顎に手を当てる。

「これは……なんとも珍しいパターンだな……ん?」

 三丸の下に通信が入る。

「三丸隊長、危険度の上昇を確認しました」

「いくつだ?」

「Aです」

「一気に跳ね上がったな……了解」

 三丸が通信を切る。

「ギャアアアアッ‼」

「ふむ、目を潰した大型の奴らまで取り込んだか……」

 三丸が接近する。花が声を上げる。

「き、危険です!」

「問題は……ない!」

「⁉」

 三丸が爬虫類の足にタックルを食らわせ転倒させ、頭部の方に回り込み、ロープを取り出して首に巻き付ける。

「往々にして生き物というのは、目か首が弱点だ……ふん!」

「ギャ! ……グエ……」

 三丸が巻き付けたロープを思いっきり引っ張る。爬虫類は少し抵抗しようとしたが、すぐにぐったりとなる。それを確認した三丸はロープを離し、両手をポンポンと叩く。

「ざっとこんなもんだな、指令部、聞こえているか? 回収などは任せる……」

「了解しました」

「す、すごい……」

 花が絶句する。

「鬼か……」

「金棒を振り回す方が十分鬼だろうが……」

 爬虫類の巨体から降りた三丸が呟く。

「き、聞こえていた……」

 蘭が口を抑える。三丸が四人の下に歩み寄ってきて、思い出したように告げる。

「言い忘れていたが、貴様ら四人、配置転換だ」

「ええ⁉」

「これからは第四部隊所属となる」

「第四部隊……ひょっとして?」

「ああ、察しが良いな、宇田川花隊員。ワタシが隊長だ、よろしく頼む」

「「「「よ、よろしくお願いします!」」」」

 四人の緊張しまくった敬礼に三丸が苦笑する。

「妙な硬さがあるな……まあいい、帰投するぞ」

 三丸が笑顔で四人に声をかける。

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