座談会は続いていく。
俺たちは、自身の英雄譚について語り合っている。
取り留めもない会話をする中で、気がついたことがある。それは、俺たち三人がいた世界が、全くの別物であったということだ。
時代が違うとか、場所が違うとか。そういったレベルの話ではない。
世界そのものが別物だ。常識やルール、何から何まで。
クロトのいた世界では、モンスターが人里を襲うことは滅多にないらしい。人に対して友好的なモンスターもおり、人とモンスターが共存している町もあるという。
さらに驚いたのは、人の能力が数値で確認できることだ。レベルというものがあり、モンスターを一定数倒すと数値が上がる。決まったレベルに達すると、突然、魔法が使えるようになるという。
モンスターを倒すとお金に変わったり、訓練もなしに魔法が使えるようになったりと、不思議な現象が多すぎる。だが、クロトの世界ではそれが常識。疑問を抱くものはいないらしい。
一方、レオンのいた世界にはモンスターがいないという。エルフや獣人のような亜人もいないため、種族は人間だけ。全ての国が、人間の国らしい。
人間しかいないなら、種族間の争いが起きなくて平和なのではないかと思った。しかし、民族、肌の色、宗教、国の違いによる争いが絶えなかったとレオンは言う。モンスターのいない世界ならではの争いなのだろうか。
それに魔法がないようで、代わりにカガクが発展しているらしい。『テッポウ?』とかいう、鉛玉を発射する小型の大砲みたいな武器が主流なのだという。かつては剣や槍が武器として使われていたらしいが、このテッポウができてからは、軍人は皆、テッポウを武器とするようになったとか。
「と、いうわけだ。私の作戦によって、見事、敵国の包囲網を突破したのだ!」
「よく、そんな作戦思いついたね」
「当たり前だろう! 私は天才なのだぞ!」
レオンが敵国との戦争で勝利した話を、俺たちは聞いている。
人と人の戦争。
その中で、亡くなった人がいるのは事実だろう。
しかし、俺はもうレオンを否定しない。
レオンは、自分の守るべき存在のための行動をしただけなのだから。彼が英雄として求められていることをしただけなのだから。
全く違う世界の全く違う立場の俺に、それを否定する資格はない。
英雄の定義は、求められるものによって変わる。
俺は、彼らとの出会いでそれを知ったのだ。
リラックスするように目を瞑り、紅茶を飲む。ティーポットの紅茶は、もう五杯目に入っている。
紅茶の香りが口の中に広がるのを楽しむ。そして、目を開ける。
すると、あるものが目に入る。
「レオン、クロト。新入りが来たみたいだぞ」
俺の言葉を聞き、二人は後ろを振り返る。
そこには黒髪の少年が、困惑した表情で立っていた。
「はじめまして。クロトだよ」
「私はレオン。貴様は誰だ? 名乗れ」
「た、タローと申します……」
唐突に声をかけられ驚いた表情をしつつも、彼は答えた。
彼も英雄なのではないだろうか。
英雄たちが集うこの場所に来たことが、そう感じさせた。
ならば、やることは一つ。
彼の話も聞いてみよう。
「俺はルーカス。ようこそ、英雄の座談会へ。新入り君」
新たな仲間を加えて、これからも座談会は続いていく。
本作はこれにて完結となります。
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