俺の名はエンジゾル・コミー・クリムゾン。ミドルネームがあるのは貴族の証し。
あの演説の教皇、素晴らしかった。9歳だと言うのに。教皇様になら寄付しても良いのかもなぁ。
「あらぁどうしたの~?あの襲撃からおかしいわよエンジ」
「あ、あぁフィッチ。気にするな」
この妖艶で派手に着飾った女性はフィッチ・ビッチ。
こいつはいつも口八丁で俺をたぶらかそうとする。だから信用に置けない。
「大方、妖精教皇サマにでも惚れ込んじまったんじゃねぇかぁ?」
口をニヤつかせて近寄ってくるこのモヒカンの大男はロブ・へイヤー。
この体格からよく戦闘で働いてくれる。その筋骨隆々な腕の大ぶりは圧巻だ。
有に10人は薙ぎ払う。
ズケズケと馴れ馴れしく話しかけてくるのはこいつの悪い癖だが。
「な、何を言ってるロブ!!」
「へいへい。そういう事にしといてやるよ」
「おめえら、あっち行ってろ!!」
俺は声を荒げ人払いをした。
「へいへい。わーったよ」
「ったく。つれないんだからぁ」
バタンッ
二人連れ立って部屋を抜けた。
「寄付、か…賊になった俺が何を考えてるんだかな…」
俺はかつて、辺境にある片田舎の荘園領主だった。
慎ましくも平和に暮らしていた。
関所を作っての通行税を取らなかったため、次から次に街に出る人が現れた。
俺はただ、街の人の移動に制限をしたくなかっただけだ。
しかし、街に憧れを持つ若い子どもたちが次々と領土を離れていく。
次から次に人がいなくなる。また一人、また一人…。
…とうとう荘園領に住む働き盛りの年齢の若い人は俺一人になった。
盗賊なんて愚かなことだとわかっている。しかし、領にはもう、俺と御年長くない老眼の執事以外誰もいない。
俺は親から引き継いだ土地を管理するすべしか教わってこなかった。
もちろん俺も、このままではいけないと思い、農作物を育てようと町の図書館で農作物の育て方の本にかじりつき、農作物を育てるために試行錯誤してみた。
しかし、農業の知識だけで農作物がそだつほど甘くはない。
俺は、自らの土地を執事に渡し、教皇のいる首都の近くに出稼ぎにくるようになった。
もちろん俺のようなよそ者が街に入ったところで仕事にありつけるわけでもない。
盗賊に身をやつしたのは必然と言える。
さて。教皇に突撃するのは問題があるから、あの場所に居た革命軍にでも突撃しようか。
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