ある日、夜遅くまで、ある革命家の漫画をタブレットで見ながら眠っていた。
そして起きたところ、家とは全く違う、木でできた家のベッドで目覚めた。
「ふわぁぁぁ~~~よく寝た~~~」
硬いベッドから目覚めた。ん?硬い?
シャァァァァーーーーー。
洗面台で顔を洗った。
なんだか木の匂いが。ん?木の匂い?
ふと、あたりを見回してみた。
あれ?ここ、どこ?見たことない洗面所。
洗面所で鏡を見てみると、そこには体格ががっしりとして眼帯した男の人が。
絵で見たことあるけど、思ったより目つきがきつい大人の人が。
って、今、両目とも見える…。マスクみたいに蒸れるから眼帯はいらないなぁ。片目が塞がれててぼんやりとしか見えないのになんのために付けているんだろ?あ。目に汗が。
洗面所に投げ捨てられるように置かれていたタオルで水を汲み顔を洗った。
雑巾みたい。
フキフキ
よし。これで見えるようになった。
目を掻いていてよく見えなかったけど、僕の姿は…革命家?!
革命家のワールズ・ヨークスルー。無血革命を目指している革命家のおじさんだ。
「これが、ボクなの?!」
ガチャッ
ノックもせずに緑の軍服のオールバックの気さくな見た目のおじさんが洗面所にズカズカと入ってきた。
漫画の知識がそのままならば、この人の名前はドッカーニ・アルドさん。
「よぅヨーク。これからいつもの広場だぞ。準備できてるよなぁ?っても、いっつも川で体拭く以外はおんなじ服しか着てねぇからオメェに聞くのは野暮ってもんだな」
「そういわないのドッカーニさん。ワールズさん、眼帯を痒がってるでしょ?」
穏やかな顔の女性が割って入る。そしてボクの顔を拭き始めた。
窓から川が見える。
この女の人はオーギャスタ・ヴァースさん。年齢はお母さんよりも若かったはず。
それでもそのにこやかな笑顔で思わず甘えたくなってしまう
だめだよ。ボクは今はワールドさんなんだから。
「あらあら。急におとなしくなりましたね。いつもは『そんなのいらない』って突っぱねてしまうのに」
キュッキュッ。
少し力強く顔を拭いてくれる。力が強くて少しだけ頬の肉が擦れて痛い。
「って、それと、ヴァーさんって呼ぶのやめてくれないでしょうか?」
笑顔をみせてドッカーニさんに問いかける。口を引きつらせながら。
「なんだよヴァーさん。ワールズの野郎はいっつもこだわらないもんだって」
ぶっきらぼうにドッカーニさんは答える。
ヴァースさんは、そんなドッカーニさんを無視して、眼帯を取り外して僕の顔を拭いてくれる。なんだかお母さんみたいだ。
「ったく。若ぇのにお母さんじゃねぇんだから拭くのはやめてやれよ」
ドッカーニさんの指摘とは裏腹に顔を洗うの気持ちいい。
キュッキュッ。お母さん、という言葉に反応するように拭く力が強くなってなった。
「痛っ!」
「あら。ごめんなさい。思わず力が」
「はい。いつもの眼帯ね」
そう言って、ヴァースさんは眼帯を差し出してくれる。
「あ。今はやめておくよ」
ボクは眼帯を受け取らなかった。
「え?!『これがないと落ち着かない』っていっつも言ってたじゃねぇか」
でも、目に汗が溜まって痒いし…。でもそうは言えないから…。
「いや、今は暑いしそういう気分じゃ」
すこし戸惑いながらもドッカーニさんの問いかけに回答した。
「って、ならしょうがねぇ。確かに蒸しあちぃしな」
手を団扇のように仰いだ。
「バーさんはどうなんだ?そんな黒い厚着で暑くねぇのか?」
また『バーさん』って言っちゃってるよドッカーニさん。
「ふぅ…」
バーさん発言に反応しないようにため息をつく。
「私は、喪に服しておりますから…」
ヴァースさんは遠くを見るような目でそう呟いた。
「そうだった。無神経だった。正直すまんかった」
「話は変わるがもう行くぞ。いつもどおり、暴動で暴れまわってやろうぜっ!!」
えっ!?暴動?!無血革命じゃないの?!
「何をキョトンとしてんだ?いつもどおり、あの”妖精教皇”の鼻を明かしてやろうぜ。つってもいつもどおりぶん殴るだけだがよ」
妖精教皇。漫画の解説によると、演説を行う堂々とした佇まいから信仰を新たにする人が多い。
今日はその演説に突撃するという。
「演説を聴いてると心を揺さぶられるって人が多いらしいからな。いつもどおり、お出ましたときに広場の衛兵殴ってずらかる、って寸法で行く、だろ?」
えっと…。
「さて、と。」
ベランダに出ると、すでに並んでいた市民人たちがさながらすし詰め状態になって革命旗を掲げて気勢を上げていた。
「じゃあ野郎ども、出発!!」
「オォォォーーーーーっ!!!」
「じゃ、いってらっしゃい。いつもみたいにカレー用意して待ってるから」
ヴァースさんも穏やかな顔で手を降って見送る。
え?え?
『ちょっとは人の話を聞いてーーーーーっ!!!』
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大声を張り上げ、みんな、広場の方に向かっていく。
ドッカーニさんがが暴動を先導している。無論、ボクも立場上隣に並んでいる。正直逃げ出したい。
革命の旗を掲げて市内の道路を練り歩く。
「王家とつながってるのはわかってるぞ!!」
「圧政を許すな!!!」
「枢機卿の横暴を許すな!!」
その大きな声はさながらのようだ。
「止まれ!!此処から先は教皇様の演説会場だ!!通さんぞ」
赤いふわふわのついた兜。オレンジと黒の縦じま模様のインナー。
先っぽが三股に別れた、チーズみたいな名前の槍。
こちらは武器を持っていないのに、ボクたちの革命軍は意に介さず衛兵さんをなぎ倒していく。
衛兵を突破してとうとう広場に来てしまった。
「突撃だ!!かかれーーーーーーっ!!」
そういって演説台に突撃した。
「待てーーーーいッ!!」
突如として赤い服を着た盗賊風の男たちが演説台を占拠した。
ボクたちとは違うグループだ。
「今からこの場所は俺様、エンジゾル盗賊団の縄張りだ!!教皇サマも革命軍も黙ってろ!!」
臙脂(えんじ)色の上下の鎧に身を包んだ体の大きな顔が日焼けで赤くなっている男の人だ。
盗賊?!一体どうなってるの!?
『助けて神様っ!!』
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