外は外灯が点いていても、思ったよりも暗かった。眠る前に部屋を暗くするよりかは明るいけれど、この暗さは私にとって恐怖である。
なるべく人と会わない道で、なおかつ安全な道を進みたい私は、住宅の立ち並ぶ道を進んだ。
アパートやマンションではなく、一軒家が立ち並ぶ道。一軒家のそばを歩いていれば、通り魔に殺されることがあっても、レイプ魔に犯されることはないだろう。
この時間帯でも、時々、人とすれ違った。
すれ違う人はほとんど自転車に乗っていて、歩きの人は少ない。
歩きの人とすれ違うことはないに等しいのは、歩きの人を発見したら私が道を変えるからだろう。
今日ほど、視力の良さに感謝したことはない。
歩いている人とすれ違わないよう、器用に道を変えて進んでいくと生じる問題がある。
迷子になってしまうかもしれない。
生まれつきのひきこもりではないので、買い物などに出かけた経験はそれなりにあり、その当時は方向感覚が良い方だった。
とは言え、久しぶりの外出だ。気を引き締めないと迷子になってしまう。
もしものために携帯電話を持ってきているが、歩いているのが住宅街だ。家に電話をして『杉本さんの家まで迎えに来て』と言っても分からないだろう。
何より、この歳で迷子になるのは格好が悪い。
携帯電話で時間を見てみる。
ママが使用している携帯電話。私も以前は自分名義の携帯電話を持っていたが、今は持っていない。
働いてなく、お小遣いも貰っていない状態だ。携帯電話なんて贅沢品を所持できるはずがない。
私の部屋は、ひきこもり始めて変化が見られなくなった。
ひきこもって本やCDを買いにいけなくなったのもあるが、何より物を買うお金を得られないので変化のしようがないのだ。
携帯を見ていると、携帯とは不思議なものだと痛感させられる。
私達の世代では、電話機ではなくコミュニケーションツールになっている。その証拠に、携帯を持たなくなってから、私は女友達を全て失った。
まぁ、心配で家まで来てくれた友達に対し、今は会いたくないからと帰ってもらった私の対応にも問題があるが、心配で家に来てくれる友達よりも、心配でメールを送ってきた友達の方が多いのも事実だ。
過去を振り返っていると、散歩を始めて十分が経過していた。
さて、そろそろ帰ろうか。往復で二十分散歩すれば充分だろう。
散歩の時間や距離は、徐々に伸ばしていけばいい。初めから長い散歩をしたら三日坊主で終わる可能性が高まってしまう。
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