Night walker【ナイトウォーカー】

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#11

公開日時: 2022年1月28日(金) 17:30
文字数:1,012

 さらに、褒められないランクアップしてしまった。

 

「そんな事よりも、夜の散歩はどうするの」

 

「それが問題だ。大問題だ」

 

「明日からにすれば」

 

「それは名案だ。よし、それにしよう」

 

「大問題の割りに、すぐ解決したね」

 

「そんなもんだよ」

 

 人生を悟っているのか、ただ何も考えていないだけなのか、紗緒里は時々投げ出すように物事を決める。

 

 それからの僕達は、簡単なおままごとをした。

 

 言葉だけのおままごと。

 

 僕達はこの遊びを気に入っていた。

 

 お父さんやお母さんを演じるのではなく、特定の職業や年代を演じる、おままごと。

 

 シチュエーションだけが決められている、アドリブ芝居といったほうが近いかもしれないが、僕達はまだまだ未熟で、自分の決めた役を演じ切れていない。

 

 所詮ままごとレベルなのだ。

 

「今回、私は孫をやる」

 

「孫って、また自由度が高い」

 

 三歳の孫もいれば、五十歳の孫もいる。

 

 赤ん坊の孫もいれば、国会議員の孫もいる。

 

 年齢も職業も、明白でない。

 

「だから、幸介がお爺ちゃんをやって」

 

「まだ、僕が年寄りくさいネタを引っ張るか」

 

「だって、お爺ちゃんいないから、どんなもんかなって」

 

「僕もいないから、演じ切れないよ」

 

「幸介の歳で、おじいちゃんがいないって変じゃない?」

 

「生きてはいるかも。死んだとは聞いてないから」

 

「要するに、分からないんだ」

 

「初めからいなかったし、そんな話題が上がったこともなかったから、お爺さん、お婆さんがいるかなんて考えたこともなかった」

 

 僕には、お爺さん、お婆さんがいるのだろうか? 確かめたいけれど、確かめる術がない。

 

 お父さんの名前を出しただけで、お母さんは凄まじい剣幕で怒鳴り散らす。

 

 とてもではないが、お母さんに真相を聞けない。

 

 そうなると、打つ手はなしだ。

 

 僕の行動範囲はその程度である。

 

「でも、二十歳でお爺さん、お婆さんが亡くなってるとしたら、それも早くない?」

 

「そっか…ママが四十六だから、七十から八十ぐらいだよね」

 

「今はね。紗緒里が産まれたときで考えると、マイナス二十だ」

 

「一度も会ったことがないけど、私が産まれたとき、お爺さん達は生きてた可能性が高いんだ」

 

 その言い方だと、産まれたときは生きていて、今は亡くなっているような言い方だが、ここは細かく突っ込まず話を進める。

 

「父方のお爺さん、お婆さんだっているんだし」

 

「おー 幸介鋭い」

 

「普通だよ」

 

 本当に、考えが足りない人だ。これだけ考えが足りなかったら、引きこもるほど悩まないのではと思ってしまう。

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