その何気ないしぐさの一つ一つが、とても魅力的だった。
少女としてではなく女性として、魅力的である。
「いってらっしゃい」
そう声をかけると、ユウは無邪気な笑顔で「いってきます」と手を振った。
きっと、こういう子が皆に好かれるのだろう。嫌味気がなく男に媚びない明るい子。
角を曲がるまで、私はユウの後姿を見つめていた。予報が悪いのに傘を持っていない。私だったら必ず傘を持っていくが、ユウは出かけるときに晴れていたら、折り畳みの傘さえ持たない主義だ。
角を曲がり、ユウの姿が見えなくなると、私は部屋を出てリビングに移動した。
ママと軽く朝の挨拶を交わし,テーブルに着く。
テーブルには、私一人分の朝食が用意されていた。後はトーストが来れば準備万端である。
ママはユウと一緒に朝食をとっているので、残りが私だけになる。時間の都合なのか、私と一緒よりユウと一緒のほうが楽しいからかは分からないが、いつもこのパターンである。
新聞のテレビ欄を見ていると、トーストが運ばれてきた。
私はいただきますも言わずに、朝食に取り掛かった。
言おうにも、ママは既にキッチンへ移動してしまっている。
自分とユウの食器を洗っているのだろう。
かまわずに朝食にかじりつく。テレビはついているけれど、ひかれる話題ではないので、視線はママのほうに向いてしまう。
慣れた手つきで洗い物をしている。正直に凄いなと思う。私は料理が出来ても、洗い物は苦手だ。
包丁で指を切るのは怖くないのに、誤って食器を割ってしまうのが怖いからだろう。
技術的なものではなく、精神的な部分で洗い物を苦手にしているようだ。
そうユウに話したら、ユウは「変わってるね」と笑いながら言って、最後に「私はどっちも出来ないよ」と付け加えた。
苦手ではなく、出来ないのだと。
出来ないだけならまだマシで、する気さえないと胸を張っていた。
水道の音が止まり、ママが振り返る。
洗い物が終わったようだ。
この後、ママは洗濯に取り掛かるのだが、振り返った際に私と目が合ったからか、こっちにやってきた。
「女の子なんだから、もう少し行儀よく食べなさい」
両肘をつき、猫背気味に食事をしている私に軽く注意する。
「女の子って歳じゃないよ」
本当は、料理が作れる私より、料理が作れないユウの方がその注意は妥当だと言い返そうと思ったが、僻みになりそうなので我慢した。
大体、女は料理を作れないといけないなんて、昭和初期の考えである。
「まだ二十歳でしょ」
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