「成人してるんだから、大人なの」
「大人なら、行儀よく食べなさい。男の子にもてないわよ」
「そういうの、興味ない」
「男遊びが激しいのは困るけど、その歳で異性に興味がないって言うのも困りものよ」
「男性を見て、かっこいいとか思うけど、それだけ。憧れとかで付き合うって気にはならないの」
「そう…困ったわね」
そう嘆き、ママは洗濯に向かった。
本当はもっと話がしたかったが、人付き合いの苦手な私は親と話す内容さえ思い浮かばない。
情けなくて、ため息が出る。今度のため息は深呼吸の意味を成さなかったらしく、心は満たされなかった。
朝食を終えると、自室に戻りベッドで仰向けになった。
こんな生活をしていたら駄目だ。将来の不安は日に日に募っていく。
そんな一生をかけた悩みが目の前に迫っているのに、真っ先に恐れるのはこの不安である。
太ってしまう。
食べてすぐに転がり、特に動きもしないでお昼まで過ごす。こんな生活をしていたら確実に太ってしまう。
現に、三年前と比べて五キロ太った。親の目から見て痩せ過ぎだった私は、そのぐらいのほうが良いとママにもパパにも言われる。
確かに、身長一六五センチ、体重四八キロ。ちょうど良いかもしれない。
でも、それはあくまで一般的な話である。私の四十八キロは何も運動をしないで、一日中堕落しながら太った四八キロだ。健康的とは言えない。
現に、体重の割りに脂肪が多い。
このままでは、どんどん価値の無い女になってしまう。見た目が良いだけで退屈な女が、見た目も良くない、退屈な女になってしまう。
危険を感じた私は、急いで立ち上がった…が、次に起こす行動が思い浮かばない。
何をどうするか。この疑問は簡単に解消される。体を動かせばいいだけだ。
問題は、どのように体を動かせばいいかだ。
ムキムキマッチョになりたいわけではないので、間違った運動をしたら筋肉がついてしまう。
筋肉は落ちると贅肉になるらしいので、肉自体を減らさないといけない。
肉を減らすにはどうしたらいいのだろう? どこかで燃焼させると聞いたような気がするが、だとしたらやはり運動して体を温めないといけないのだろうか?
ダイエットとは無縁だったので知識が乏しい。都合よくダイエット特集がやっていないかテレビをつけたが、そう都合よくはいかなかった。
鏡を見てみる…よし、顔に無駄な肉はついていない。多少ふっくらしたけれど、ママの言うようにこの方が人を寄せ付けない雰囲気はなく、好意的に見られそうだ。
あっ、失礼かもしれないけど、今のほうがユウに似てるかも。
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