Night walker【ナイトウォーカー】

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#04

公開日時: 2022年1月26日(水) 17:50
文字数:1,041

 私は、素直にユウへ憧れを抱いている。ユウに似たのなら、痩せずに今のままでもいいのではないか?

 

 これ以上太らなければいい。これから気をつけていこう。

 

 いつもは転がりながら読書や音楽鑑賞をしているところを、今日は座りながらにした。

 

 ただ、それだけなのに腰が疲れた。ママに言われたとおり行儀よく背筋を伸ばしていたからだろう。

 

 十二時になると、ママはパートに出かけた。ママのパートは午後一時から午後六時まで。そんなに遠い場所ではないが、行きに本屋や喫茶店により、軽く息抜きをするらしい。

 

 まさか、不倫はしてないだろう。ママはそういうタイプではない。

 

 性格的に不倫するタイプではないし、痩せているが美人ではない。不倫はしないし出来ないだろう。

 

 お昼は、簡単にインスタント食品で済ませた。冷凍のスパゲッティーとカップのコーンスープ。

 

 それと、残りのご飯でおにぎりを二つ作った。

 

 お昼の定番であるバラエティー番組を点ける。

 

 今日のゲストは、ユウの好きなミュージシャンなので録画しておく。

 

 ユウは学校でこの番組が見られないので、きっと喜んでくれるだろう。

 

 私は熱狂的になる芸能人がいないので分からないけれど、ユウはこの人とデートできるなら、有り金全部出しても良いと言っていた。

 

 有り金と言っても一万円もないらしいが、ユウにとってはその金額に意味があるのではなく、有り金全部に意味があるらしい。

 

 たとえ一千万円持っていても、全部出していいのだと。

 

 それほどの熱狂ぶりなので、ネットで情報を仕入れ、自分で予約録画をしている可能性もあるが、別にいいだろう。保険として録っておこう。

 

 昼食を終えしばらく経ち、体も動きやすくなったところで、おにぎりを持ち立ち上がった。

 

 お昼になり、予想通り気温が上がってきた。エアコンのない外に出たら、うだるように暑いんだろうなと気を滅入らせながら傘を持ち、玄関のドアに手をかけた。

 

[Night- walker]

 

 僕は、神の子らしい。

 

 お母さんが言うのだから、絶対だ。

 

 神の子だから、父は必要ないのだと。

 

 神の子だから、学校に行く必要もないのだと。

 

 神の子だから、お祖父さんやお祖母さんの言うことに耳を貸さないでいいのだと。

 

「ルマイティー、いってくるわね」

 

「はい、お母様」

 

 いつからか、お母さんは僕を名前で呼ばず、変な呼び方をするようになった。

 

 それと同時に僕がママと呼ぶことも、お母さんと呼ぶことも禁じられた。

 

 時計を見ると、時刻は午前四時を指している。

 

 いつもなら明るくなってくる時間だけれど、小雨が降っているのでまだ暗い。

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