私は、素直にユウへ憧れを抱いている。ユウに似たのなら、痩せずに今のままでもいいのではないか?
これ以上太らなければいい。これから気をつけていこう。
いつもは転がりながら読書や音楽鑑賞をしているところを、今日は座りながらにした。
ただ、それだけなのに腰が疲れた。ママに言われたとおり行儀よく背筋を伸ばしていたからだろう。
十二時になると、ママはパートに出かけた。ママのパートは午後一時から午後六時まで。そんなに遠い場所ではないが、行きに本屋や喫茶店により、軽く息抜きをするらしい。
まさか、不倫はしてないだろう。ママはそういうタイプではない。
性格的に不倫するタイプではないし、痩せているが美人ではない。不倫はしないし出来ないだろう。
お昼は、簡単にインスタント食品で済ませた。冷凍のスパゲッティーとカップのコーンスープ。
それと、残りのご飯でおにぎりを二つ作った。
お昼の定番であるバラエティー番組を点ける。
今日のゲストは、ユウの好きなミュージシャンなので録画しておく。
ユウは学校でこの番組が見られないので、きっと喜んでくれるだろう。
私は熱狂的になる芸能人がいないので分からないけれど、ユウはこの人とデートできるなら、有り金全部出しても良いと言っていた。
有り金と言っても一万円もないらしいが、ユウにとってはその金額に意味があるのではなく、有り金全部に意味があるらしい。
たとえ一千万円持っていても、全部出していいのだと。
それほどの熱狂ぶりなので、ネットで情報を仕入れ、自分で予約録画をしている可能性もあるが、別にいいだろう。保険として録っておこう。
昼食を終えしばらく経ち、体も動きやすくなったところで、おにぎりを持ち立ち上がった。
お昼になり、予想通り気温が上がってきた。エアコンのない外に出たら、うだるように暑いんだろうなと気を滅入らせながら傘を持ち、玄関のドアに手をかけた。
[Night- walker]
僕は、神の子らしい。
お母さんが言うのだから、絶対だ。
神の子だから、父は必要ないのだと。
神の子だから、学校に行く必要もないのだと。
神の子だから、お祖父さんやお祖母さんの言うことに耳を貸さないでいいのだと。
「ルマイティー、いってくるわね」
「はい、お母様」
いつからか、お母さんは僕を名前で呼ばず、変な呼び方をするようになった。
それと同時に僕がママと呼ぶことも、お母さんと呼ぶことも禁じられた。
時計を見ると、時刻は午前四時を指している。
いつもなら明るくなってくる時間だけれど、小雨が降っているのでまだ暗い。
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