僕と彼女とレンタル家族

プロローグ
suzudeer s
suzudeer

第2.5話

公開日時: 2021年10月21日(木) 10:47
文字数:866

「パパ! ちょっと来なさい!」




真剣な表情で、在過トウカを呼ぶ妻がムスッとした表情で睨んでいる。何か過去の話の中で、怒らせるようなことでもあったのだろうか?


急に機嫌が悪くなった妻に、在過は不安になりながらも近づく。




「んっ」


「ん!?」


「あーーーチュってした!」


「どうしたんだよ急に」


「どうもしませんっ!」




顔を真っ赤にしながら照れる妻の姿に在過は、嫉妬してくれていた可愛さに苦笑した。




「どうして笑うんですか!」


「いや、最高の奥さんだよ」


「当然です。だって、貴方が望んだ妻ですもの」


「パパ~キコもするぅ」




在過は、娘の頬にキスをした。




「ばっちぃ! 臭い!」


「なんだとぉ~」




ケラケラと笑う娘の姿に、過去の話で嫉妬してくれる妻が今ここにいる。


だから、辛い過去を思い出すことは苦しいが、話をしているとスッキリする感覚も同時にあった。




「それにしても、彼女さんから告白してきたなんて、失恋したばかりの彼女の心は、パパの当たり前の行動がすごく嬉しかったんですね。」




「そうだな、オニオンスープを貰ったことが、すごく嬉しかったと聞いたことがあるよ」




「キコもオニオンスープ飲みたい」




「ママと買いに行こうねぇ~」




「えぇ、だったら僕も一緒に行くぞ」




「パパは飲めないからダメぇ~」




「飲ませてくれよぉ」




ずっと望んでいた家族がいる。


妻と子供がいる生活が手に入った。


そんな夢心地な気分が、在過の全身を優しく包む。




「大丈夫?」


「また泣いてるのぉ?」




在過は、自分でも泣いていることに気づかないほど……嬉しさと悔しさが混じる。


本当は神鳴と家族になりたくて、夫婦になって子供を授かる未来を考えてきた。


でも、今そんなことを思ってしまうのは最低な男だろう。


妻も子供もいるのに、まだ過去の女性を追っているのだから。




だから……、この気持ちに決着をつけるために。また、過去と向き合わなければいけない。逃げ続けた代償は、必ず大きくなって返却される。




「大丈夫さ。幸せすぎて涙が出たんだな。言葉も希心も大好きだぞ」


「私もです」


「キコもぉ~」




「さぁ、続きを聞いてくれ。僕はこれからもお前達と***いくために」

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