彼女は、言葉の意味を知らないと言った。

きっといつかが、今なんだ
平木明日香
平木明日香

第14話

公開日時: 2024年11月14日(木) 08:44
文字数:385



 「じゃあなんで、キミを襲ったの?」


 「…そんなの、知らないけど」


 「彼の目的が、キミを殺すことだとしたら?」


 「は!!?」



 俺を殺す…?



 …いやいやいや



 「…冗談だろ?」


 「この状況で、冗談なんて言えると思う?」


 「…わかってるけど、だからってだな…」


 「理解できない?」


 「当たり前だろ!」


 「じゃあ、キミが私のことを「好き」だっていうことは?」




 ………………………へ?



 思いもよらない言葉が、頭の中を掠めた。


 

 『好き』



 確かに、そう言った。


 聞き間違いなんかじゃない。


 はっきり、耳の中に届いた。




 ……でも、なんで………?




 「…今、なんて?」


 「キミがいちばんよく知ってるでしょ。その“気持ち”は」



 俺がしおりのことをどう思ってるか。


 そのことを、彼女に打ち明けたことはなかった。



 この場所。


 この時間。



 浴衣姿を着た彼女と、——2人。


 中学3年の夏。


 祭りがあった日だった。


 彼女から、一緒に花火を見ようと言われたのは。



 

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート