ハアッハアッ
一体どこまで走っただろう。
俺たちは田んぼの裾を走りながら、途中、山へと登る坂道を歩いた。
途中、何度か息切れした。
部活でよく走ってるから、まだなんとかなった。
それでもかなりきつかった。
しおりは嘘みたいに速いし、何度か躓きそうになるし…
あの男は追ってこなさそうだった。
見間違いじゃなければ、男の胸には確かに包丁が…
山の坂道を登ると、神社があった。
八幡神社。
俺の住んでる地区じゃ、有名な神社だ。
有名っつっても、あくまで個人的な意見だけど。
そういや、最近はあんまりきてなかったな。
2年か3年前の祭り以来だった。
毎年夏になると、各地区で花火を上げる行事があった。
町内会で集めたお金で、何十発かの花火を上げる。
この八幡神社は、「八幡祭り」っていう夏のイベントの主催地でもあった。
俺にとっては、“思い出の場所”でもあった。
神社に着くなり、しおりは腰を下ろした。
持っていた包丁を賽銭箱の上に置き、軒下に入った。
その間、俺は息を整えようと思った。
さっきからパニクっててしょうがなかった。
包丁に目が行くたびに血の気が引いた。
…だって、ありえないだろ?
…包丁…だぞ…?
それもそうだし、なんでしおりが…?
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