ミズキとはよく喋ってたけど、俺とは、全然。
ピアノ教室に行ったのも、“仕方なく“って感じだった。
保育園の頃は。
行ったってすることないし、ピアノにも興味はなかった。
だから、いつも庭でサッカーの練習をしてた。
…まあ、うろ覚えなんだけど。
保育園の頃のことなんて、ほとんど覚えていないことが多い。
ただ、初めて彼女に会った日のことだけは、よく覚えてた。
聞き慣れないピアノの音色と、開け放した窓の向こうに見える、暖かい春の日差しを。
「……どういう…意味…?」
そう聞かずにはいられなかった。
彼女の言ってることは間違いじゃない。
でも普通、そんなこと言わなくないか…?
自分のことが「好き」って…
「あれ?違った?」
…違わない…けど
目が泳いでしまった。
素直に頷けない自分がいた。
想定外の言葉すぎて、返す言葉さえ見つからなかった。
戸惑う俺を横目に、彼女は言った。
「「好き」という言葉の意味は、まだ、知らないけれど」
——と
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