「多分、もう追っては来ないと思う」
…追って?
…追ってって、あの男のこと…か?
身を隠すため、中に入った。
彼女はそう説明してきたが、整理したいことが山ほどあった。
一旦落ち着こう。
俺は頭の中で、さっきのことを思い出せずにいた。
思い出せないっていうか、思い出したくなかった。
多分、…いや、…恐らく、なんだけど…
包丁が刺さってた
そんなこと、普通は起こり得ないよな…?
でも、実際に見たんだ。
その「光景」を。
「…あの」
「ん?」
「お前、…しおりだよな?」
暗い部屋の中で、ぼんやりとその顔が見える。
疑ってるわけじゃない。
しおりで、…間違いない。
見間違えることなんてない。
…絶対に。
「彼女は、もうこの世界にはいない」
……………
………
…は?
…………いない?
……いないって、………………どういう
「あの男が「誰」か、まずはそこから説明しないといけない」
…そんなの、決まってるだろ
ただの不審者だろ?
金か何か、物色しに来たんじゃ…
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