小学校の入学式。
桜が舞う学校の校庭で、サッカーボールを片手に、俺は1人で遊んでた。
親が来るのを待ってた。
入学式が終わって、何人かの親達と談笑する母親を待ちながら、着慣れない上着と帽子を脱いで、校舎に出入りする上級生達を見てた。
小さい町の、小さい学校と言っても、あの当時の俺からしたら、“たくさんの人たちがいるな”って感じだった。
全校生徒は100人くらいかな?
…もっといたっけ?
都会に比べたら全然だけど、他の街や学校のことは、あんまり知らなかったからさ?
「…ハジメくん…だっけ?」
木漏れ日の中に彼女がいるのを、俺は見つけられなかった。
ぶ厚いジャケットを鉄棒にかけて、桜の木の下に腰をかけようとしていた時だった。
木が並ぶフェンス側のそばで、ポツンと座っている彼女がいた。
「…あ」
まさか…
思わず声が出てしまった。
ピアノ教室では、まだ一度も話したことがなかったから。
「ミズキちゃんは?」
「…ああ、多分帰ったんじゃないかな」
俺と違って、ミズキとはよく話してた。
ピアノを習いたい!とか急に言い始めて、教室で彼女と出会って。
コードの読み方もわからないミズキにとって、スラスラと鍵盤を鳴らす彼女の演奏は圧巻だった。
憧れてた。
だから、自分から話しかけに行ったんだと思う。
それから、すぐに友達になった。
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