「とりあえず、中に入ろう」
「中って、神社の中に!?」
それって不法侵入になるんじゃ…
っていうか、入れんのか??
正面の格子戸に手をかけ、彼女は中に入った。
鍵がかかってるのかと思った。
古い神社だから、軒下の梁には蜘蛛の巣がかかってた。
格子戸のガラスは元々曇りガラスだったのかっていうくらいくすんでて、扉へと繋がる階段もギシギシ悲鳴を上げている。
聞いた話じゃ、築百年はくだらないそうだ。
補修工事とかしたって話だったけど、多分昔は、もっとずっと古めかしい作りだったんだろう。
彼女につられるように中に入ると、湿った木の匂いが、冷たい空気の中を通ってやって来た。
…暗い。
外が暗くなってるせいで、余計中が暗かった。
ただ、奥に“神様の間”があることはわかった。
それをどう呼称していいかはわからなかったが、この建物がどういう「建物」かは、なんとなくわかってた。
ようは、神様が祀られてる場所だろ?
拝殿だか本殿だか、そういう細かいことはよく知らないが、少なくとも、この場所が気軽に入っていいような場所じゃないことは知ってた。
お坊さんとか、神社の関係者とかならまだしも。
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