「…しお…り…?」
嘘だろ…?
…なんで?
戸惑う俺を横目に、「逃げて!」と、彼女は叫んだ。
甲高い声が、田園の風景の中に響いた。
その拍子に、森の中にいた鳥が飛び立つ。
乾いた音とは程遠かった。
かといって、水のようなしめやかさはなかった。
俺は動けなかった。
動こうと思えば、動けたのかもしれない。
でも、そういう状況じゃなかった。
不審者が目の前にいて、そのすぐそばで、しおりが立ってる。
彼女は幼馴染だった。
保育園の頃から一緒で、小学生の頃はずっと同じクラスだった。
幼馴染で、友達だった。
いつも一緒だった。
最近じゃ、会うこともあんまりなかったが…
「早く逃げて…!」
「…は!?」
「早くここから離れた方がいい。時間を稼ぐから」
離れるったって…
そんなの、置いていけるわけないだろ??
しおり1人で対処できるような状況じゃなかった。
っていうか、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
時間を稼ぐのは俺のほうだ。
しおりの方こそ早く…ッ!
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