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初連載です。よろしくお願いします!
色の付いたガラス、見渡せるようで見渡せないガラス。
ノースガーデンの冬季は厳しい。
アスターの朝は目を覚ますと薄暗い部屋、古いベット、凍てつく空気。何てことない朝。
灰汁を吸い込ませたガマの穂を乗せた火打石に火打金を勢いよく叩きつけ、暖炉に火を付けた。暖炉の上で昨日多めに作ったスープを温めながら、出掛ける支度を済ませる。
スープを食べながら、今日売る薬について考える。何てことない日常。
アスターには何一つ不便無い。古いベットも薄暗い部屋も綺麗にすれば気にならないし、凍てつく空気も暑いより目覚めがいい。何よりここは山の奥深くなので、水も空気も綺麗だし、少し歩いて開けた崖へ出れば、町並みが反射して光る海が見える。そんな環境が負の感情や寂しさも洗い流してくれている気がする。
今日は崖から見える山の麓の町へ薬を売りに行く。あの町の人の目は距離はとても不思議で薬や僕のことをたくさん聞いて、それでも怪しがるのに、そんなこと忘れたみたいに、伝染病や高熱などの時は我先にと薬を買いに来る。それに怪しがる時も、我先に買いに来るときも、目にも、距離にも様々な色のステンドグラスのような見渡せないガラスのようなものを感じる。越えることもできなければ、触れたら割れて突き刺さってしまいそうな。
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