「…あの」
「ん?」
「…バンパイア…って、いるわけないですよね〜…なんて」
「バンパイア」なんているわけがない。
そんなのは口にするまでもなかった。
空想上の生き物で、おとぎ話の中の存在。
言ってる自分が恥ずかしくなった。
天ヶ瀬から聞いていたとはいえ、はっきりとは喋れなかった。
それが普通だろ?
100歩譲ってそういう存在がいたとして、それが東京中にいるなんて…
「全然説明できてねーじゃねーか」
「説明しましたって」
「コイツの顔を見ろよ?なーんもわかってない顔だぞ、これ」
「…はぁ」
天ヶ瀬は深いため息をついた。
そうかと思えば首を小さく横に振って、呆れたように俺の方を一瞥した。
「コンビニであったことを話せばいいんだよ」
「…え、ああ」
コンビニであったこと。
それって、例えばあのおっさんに出くわしたこと…とか?
そう聞くと、彼女は軽く頷いた。
…えっと
コンビニに行って、おっさんに出会って、それで…
最初から、洗いざらい話した。
俺が思い出せる範囲で、できるだけ正確に伝えようとした。
慎重に話さざるを得なかった。
だって話してても、うんともすんとも言わないんだ。
せめて頷いてくれよって思った。
ちっとも反応がないから、ちゃんとわかってくれてんのかもわからなかった。
頼りになるのは天ヶ瀬だけだっていうのに、天ヶ瀬は天ヶ瀬でずっと不機嫌だし…
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