「…わかります」
天ヶ瀬はコクッと頷いた。
視線はずっと金髪に向いたままだった。
苦しそうな表情を浮かべていたが、それ以上にグッと前を向いていた。
反抗しようとしているのがわかった。
掴まれた首を解こうとしてはいなかった。
ただ、まっすぐ見つめ返したまま、強気な顔を保っていた。
それが気に障ったのか、金髪は苛立ったように腕に力を入れて——
「なんだぁ?その目は!」
「マキ」と、再度語尾を強めた声が聞こえたのを皮切りに、金髪は天ヶ瀬から手を引く。
「ゲホッゲホッ…」
天ヶ瀬は息を整えていた。
首の表面は赤くなっていた。
相当キツく握られていたんだろう。
手が離れたと同時に、首を押さえながらうずくまる。
金髪はそんな彼女を見下ろしたまま、険しい表情を一層と強めた。
…やばすぎるだろ
なんでそんなに怒ってんだ…?
事情が呑み込めなさすぎる。
2人が怒ってるのは明らかだったが、思い当たる節がなかった。
いや、待てよ…
ひょっとして、俺にナイフを刺してきたこととか??
どう考えてもおかしかったよな…?
…おかしかったっていうか、“ぶっ飛んでた”って言うか
「で、どうするんだ?」
金髪は俺の方を睨んできた。
鋭い目尻がナイフのような切れ味を持ちつつ、滑る。
“どうする”、か。
その言葉の鋒が、明らかに俺の方に向いていることに気づいた。
逃げようにも動けなかった。
体が硬直していた。
動ける気もしなかったんだ。
腕は後ろに回されたままで、岩でも乗せられたかのような“重み”が、全身に覆い被さってて。
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