ガタンゴトン
ガタンゴトン
俺たちは道沿いを歩いて、高尾山口駅の電車に乗った。
彼女が言う「協会」というのは、八王子市内にあるらしい。
そこがどういうとこなのかは教えてくれなかった。
何か質問しても、言葉を濁すばかりで。
「…あのさ」
「何?」
そんな顔でこっち見ないでくれる…?
なんでそんな怒ってんのか知んないけど、せめて事情くらいは教えて欲しかった。
昨日までの俺なら、こんなことは思わなかっただろう。
隣にいるのは、あの「天ヶ瀬」だ。
端正な顔立ちに、透き通った白い肌。
凛とした目元の下には、高いカギ鼻が見える。
鼻筋は美しく整っている。
鼻筋が通っていて、かつ、とんがりすぎてない。
きれいだけど主張が強すぎない鼻と、シャープな顎のライン。
日本人らしい平たい顔立ちとは一線を画すほど、その「顔」の印象は立体的に見えた。
初めて出会った時に衝撃を受けた。
あれは、入学式の時だった。
中学の頃の友達と廊下で話してた。
入学式が終わって、体育館を出た後のことだった。
クラスが違うその友達と、これから始まる高校生活についてを話し合ってた。
向かい側から歩いてくる彼女に、全員が視線を奪われてた。
「あ…」と、友達が言ったんだ。
会話の途中だったのに、唖然とした表情で、急に声を詰まらせてて。
クラスのアイドルで、付け入る隙がない“完璧な美少女”。
噂は瞬く間に広がってた。
普通科のB組には「天使」がいる。
まさか、そんな子が隣の席になるなんて、夢にも思わなかった。
緊張して目も向けられなかった。
入学してから、しばらくの間は。
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