「…………………死?」
「覚えてるんでしょ?刺されたの」
「…覚えてるっていうか、……え??」
「だから、そういうこと」
「…そう…いう…?」
言葉にならない。
彼女が何を言ってるのかがわからない。
死んだ?
俺が…?
そんなバカな
わからないわけじゃなかった。
自分がナイフに刺されたことも。
“死ぬかもしれない”って、思ったことも。
けど、「死んでる」?
見ての通りピンピンしてる。
痛みだってないし、ナイフだって…
「キミの心臓はもう動いてない。胸に手を当ててみて?あ、今は無理か」
…ハハ
動いてない、だって?
じゃあどうやって今天ヶ瀬と話してるんだ?
生きてなきゃおかしいだろ?
こうして息してるのだって——
彼女は、混乱する俺にナイフを突き立てた。
突然すぎて、何が何だかって感じだった。
急に“刺して”きたんだ。
さっきと同じような「場所」に。
「うわぁぁぁぁッ!!」
激痛が走る。
さっきとはまるで違う感触。
今まで感じたこともないような痛みが、上半身に流れた。
周りに響き渡るほどの声を上げてしまった。
声を荒げながら、俺は暴れた。
フェンスがギシギシ揺れていた。
なんで急にそんなことをされたのかわからなかった。
何が起こったのかさえも。
“今の状況”も。
彼女はしっかりとナイフの柄を握りしめていた。
刃先が胸に触れた後だった。
後ろのフェンスに背中が食い込むほど、グッと押し込まれたのは。
「そんなに痛がらなくてもいいじゃん」
「…ハアッ…ハアッ…」
「キミが死んでる証拠を、今から見せてあげる」
「…何、…言って…」
気でも触れたのか…?
あまりの痛さに、意識が朦朧とした。
うまく息ができなくて、口からは涎が出た。
“逆立つ”って言った方がいいんだろうか?
全身の皮膚が引っ張られたようにピンと立って、筋肉という筋肉が押し固められるように硬直した。
そこらじゅうから汗が出た。
それはただの汗なんかじゃなくて、ジトッとへばりつくような汗だった。
とめどない刺激が体を襲う。
ピリピリするような熱さ
蠢くような吐き気
血が滴り落ちてくる。
溢れ出てくるのがわかった。
はっきりと。
それでいて——…
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