ドクンッ
…なんだ…?
…体が、…熱く…?
目の焦点も合わないままに伸縮する景色。
夜の静けさの中に伸びていく暗闇が、“ポツン”と、視界の背後を覆っていた。
不思議な感覚だった。
時間がゆっくり動く。
それは「感覚」であって、実際の“出来事”なんかじゃなかった。
ただ、目の奥を引っ張るような張りが、糸を張り巡らせたようにそこらじゅうに伸びていた。
血が流れていく振動。
ゴボッという破裂音。
通り過ぎる「時間」を追いかける。
ほとんど思考は停止していた。
考えるだけの隙間は、どこにもなかった。
目を動かす動作の中心に溢れる、——光。
その光は、形という形の一切を解くように広がっていた。
一つの場所にとどまることもなく、ポツポツと空間の中を漂っていた。
ジグザグに。
それでいて、まばらに。
スローモーションに動く。
瞳の先に映る全ての景色が、泡ぶく色の中に溶け込んでいく。
何かが研ぎ澄まされていく。
…ただ、その「何か」は——
ギュルッ
一瞬、耳を疑った。
疑ったのは、鼓膜の内側に響く「音」だけじゃなかった。
感覚。
さっきも言ったように、それは意識の中にある“反応“だった。
すれ違う景色の中で、今まで味わったこともないようなノイズが流れた。
色が変わるとか形が変わるとか、そういうはっきりとした変化をありありと残しながら、煙のように掴みどころのない輪郭を広げていた。
体の「中」で起こった出来事だった。
少なくとも、目の前に通り過ぎていく、全ての事象は。
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