「何か最後に言い残すことはない?」
「へ…?」
事の経緯を説明しよう。
まず俺は昨日、家から約1時間も離れた場所にあるコンビニに1人で行った。
そもそもコンビニなんて街の中にいくらでもある。
わざわざ家から遠い場所のコンビニに行ったのは、他でもない「特別な理由」があったからだ。
俺は昨日、交通事故で死んだ友達の事故現場に行こうと思っていた。
バイク事故。
無免許で暴走して、そのまま崖の下に突っ込んだ。
クソみたいなヤンキー野郎だった。
“アイツ”から、最後のメッセージが届いていた。
事故があった30分前。
ラインで、「コンビニで何か買ってこようか?」と来ていた。
その日、俺とアイツは会う約束をしていた。
俺は高校に入学して、アイツは中卒なのにもう土木関連の仕事をするからって息巻いてて。
夜、街のどこかに行こうって話になったんだ。
ゲーセンかどっかに行って、帰りに映画でも見て、タバコでもふかしに行かないか?って。
俺は断る気でいた。
最初は。
…でも、アイツとの縁だけは切りたくなかった。
親はもう絡むなって言ってきたけど、根は優しいヤツだって知ってた。
意味もなく人を殴るようなヤツじゃなかった。
髪を染めてたのも。
耳にピアスを開けてたのも。
バイクに乗ろうがタバコを吹かそうが、そういう人生もありなんじゃないか?って、少しだけ思えたんだ。
だから、「7時に会おう」って約束した。
その矢先に起こった、事故だった。
アイツが最後に見た景色を、俺は見に行こうと思ってた。
崖に落ちる数十分前、アイツが最後にいたとされるコンビニに、”監視カメラの映像“が残ってるはず。
店員になんとかお願いして、映像を見せてもらえないかなって、思ってた。
アイツの妹が、どうしても兄ちゃんに会いたいってうるさいからさ?
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