とある勇者のやり直し人生 〜転生先が魔王の娘!? って、そりゃないですよ女神様!〜

死ぬことしか許されない運命を受け入れた勇者は女神ラミリアによって別の世界へ転生させられたのだが!?
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お散歩日和

公開日時: 2020年10月1日(木) 17:49
文字数:2,560

 剣のお稽古が始まってから、私は非常に充実した日々を過ごしている。


 午前はお稽古、午後は母や姉とのお茶会。あと、先日から読み書きの先生が付いて勉強も始めた。正直、前世では幼いころに神聖教会で勉強した以来だから、結構とまどっている。


 でも、前世でも読み書きが出来ることで得することも多かった。

 ま、勇者としてそれくらい出来ないと外聞が悪いと随分言われたものだ。


 ちなみに前世の言葉とは随分と違うことに今更だけど気が付き、思わず驚いてしまった。違和感なく言葉を扱えていることを考えると、もしかすると女神様の加護があるからではないかと私は思っている。


 そんな午後のお勉強の時間が終わり、思わず暫く転寝うたたねをしてしまい、セーラに起こされた時は既におやつの時間が過ぎていた。


「本日はお茶会のお誘いはお断りを入れておきました。大変、お疲れのご様子でしたので、ごゆっくりとして頂きました」


 と、セーラは優しく微笑んでそう言った。


 美味しいお菓子が出てくる母達とのお茶会は日々の楽しみだったので、少し残念である。


「毎日、お稽古とお勉強でお疲れになっていませんか?」

「だいじょうぶ……でつよ?」


 私はセーラの言葉に即座に返答した――けれども、普段は午後のお茶会前にお勉強をして、お茶会の後にお昼寝をするのだ。


 お昼寝をしているから大丈夫だと思っていたけれど、お勉強が終わった後にそのまま転寝してしまうということは、もしかすると疲れているのかもしれない。


「姫様、当人は疲れていないと思っていても、私には少し無理をされているように見えるのです。いつもは転寝しないところで寝てしまったということは、どこかで無理をなさっているという証拠ではないでしょうか?」

「……かもしれない」

「今日は少し、散歩をしてから夕時までゆっくりいたしましょう」


 私はセーラに言われるままにすることにして、さっそく散歩をすることに決める。


 散歩といっても城内から出るわけでは無く、城内に幾つか存在する庭園の内で私も足を運んでも問題ないと許可が出ている場所に限られている。それでも以前に比べれば遥かに広い場所をうろつくことが出来るようになっている。


 普段の生活は城内でも上層部に位置する場所で自室、食堂、母達とお茶会をする部屋やテラス。母の部屋と隣接している庭園。剣の稽古で使用している近衛騎士の訓練場。そして、お勉強にしようする部屋。これが基本的な行動範囲であり、近衛騎士の訓練場以外は自室と同じに存在する。


 普段から使っている場所というだけであれば、私の移動範囲は広くないように感じるが、城のスケールがとんでもなく大きいのだ。特に近衛騎士の訓練場までの距離は幼い私が毎日徒歩で向かうのだが、往復の移動時間に一刻以上使うのだ。


 どう考えても、移動に一番体力を使っているのでは? と、いう疑問があるが、それは敢えて言わないでおこう。


 そんな中でも、本日は許可が出ているけれども、まだ訪れたことの無い場所へ行くことにする。


 この城が不思議な造りとなっていることを示すような場所なのだ。


 まだ、地図上でしかみたことの無い、城の全体図。


 この城は小高い丘の上に建っているようにみえながら、その実は小高い丘そのものが城となっている。丘の周囲は森に囲まれており、その森を囲むように広い城下街が形成されている。


 攻めるに難しい山城なのだが、その規模観は随分と非常識――私の知識的なところなので、この世界においては分からない。前世の記憶でいえば、魔王城の倍近くある規模の城に住んでいるのが今のいえだ。


 そして、この城には各所に庭園が存在するけれど、それも丘を巧く利用しており所々で外につながっている。ただし、城内から簡単に外へとアクセス出来ないように堅牢な城壁に囲まれている。


 今回、向かおうとしているのは近衛騎士の訓練場に隣接している森林部分で『荘厳なる庭』と呼ばれる場所だ。


 ちなみに口にした瞬間、セーラに「冗談ですよね?」と驚かれてしまった。


 私は簡単なピクニック気分だったが、セーラに騎士服に着替えさせられ、数人の近衛騎士が護衛に付き、セーラに抱えられて移動することになった。


 私を抱きかかえながら移動するセーラが真面目な表情で注意を口にする。


「『荘厳なる庭』は一応、お許しが出ている場所ですが、幼い姫様にとっては安全とは言えない場所ですので、護衛を4人付けさせました。安全を確保できるまでは私が抱きかかえさせていただきます」

「そんなあぶないところ……なんでつか?」

「いいえ、本来はそうではないのです――が、どこかの脳筋バカが捕まえて来た魔獣を放つというなんとも愚かしいことをしでかしたのです」

「だいもんだい?」

「魔獣と言っても雑魚ですから、訓練をある程度積んでいる者達にとってはどうということはありません。ちなみに許可が取り消されるという話が出なかったので、何か別の意図があるのかもしれませんが、それは私には分かりません」


 セーラや近衛騎士たちの雰囲気を見れば、そこまでの緊張感は無かったので念のためという部分が大きいのではないかと、私は即座に判断した。


 それにしても、魔獣を放つなんて何を考えているのだろうか?


「どんなまものなんでつか?」


 私はどんな危険が待ち受けているのか確認することにした。別に魔物に興味があったわけじゃないからね。今の私じゃ戦っても倒せなさそうな雰囲気なわけだし。


「フェーバルという小型の魔物の幼獣です。成獣となっても半ルーン程度の大きさです。肉食の魔獣ですので幼獣といえども油断してはいけません」


 ちなみにルーンというのは、この世界で使われている単位なのだが、様々なことに同じルーンという単位が使われておりかなりややこしい。かなり基本的な魔法陣の大きさ、一周する回転時間をルーンという単位で現す。


 セーラが言った半ルーンは1ルーン(※約1m)の半分の大きさということだ。


 ちなみに、魔法陣が一周回転する基礎値ルーン(※約1分)が100回転することで1刻となり、16刻が一日の時間で午前を8刻、午後を8刻と分けて考える。


 それはさておき。フェーバルという魔獣の事を考えつつも私は森の奥へ進みたいとセーラにいうと「言うと思っておりました」と、小さく笑って言われた。


 かくして、私のこちらの世界で初めての冒険が始まったのであった?

主人公(脳筋)「えっ、脳筋バカ!?」

セーラ「はい、脳筋バカです」

主人公(脳筋)「私のことじゃないよね?」


えっ?(*‘ω‘ ) (・ω・`)えっ?

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