ゴオッ
突然、部屋の中で吹き荒ぶ風。
机の上のお菓子が吹き飛び、カーテンが舞い上がる。
ベットのシーツはクシャクシャだ。
床に脱ぎ捨てられた袴もそうだった。
暴れ回る大気のように、部屋中が揺れ動く。
「風」の中心は、彼女だった。
向かい風で持ち上げられた前髪の先で、空気が震えている。
…なんだ
…一体、何が…
物が持ち上がるほどの風圧にやられ、目を閉じてしまった。
反射的に翳した手。
その指の間から、恐る恐る瞼を開く。
そこには、信じられない「物」が。
「…翼…?」
透き通った白い肌。
水色の下着。
スタイル抜群で、恥ずかしがる素振りもない。
一喝した俺を見下ろすように佇んでいた美しい彼女の「姿」が、“一変”していた。
黒くしなやかなロングストレートヘアー。
その黒髪は銀髪に変化し、耳はエルフのように尖っていた。
瞳は紅く、鋭い。
そして、何より——
背中には黒い翼が生えていた。
部屋中に舞い散る漆黒の羽根。
その「姿」は、人間と呼ぶにはあまりにもかけ離れた禍々しい容貌をしていた。
肌の色は変わっていない。
体つきも、下着姿もそのままだ。
だけど、“わかる”
「人間」じゃない
その“印象”が、ありありと瞳の中に焼き付いていた。
今まで感じたこともないような気配が、脳内に駆け走り。
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