———ズッ
意識が途切れる感覚があって、それでも、世界が回転している。
そんな妙な感覚に囚われたのは、視界が暗くなって間もなくだった。
「空」が下にある。
あるいは、水の上を“歩いている“。
そんな浮遊感が頭の中に掠めて、思わずよろめきそうになる。
——青
視界の中に広がったのは、鮮やかすぎるほどに鮮明な淡色だった。
空。
雲ひとつない空が、目の前にあった。
それから——
「うわああああッッ」
風が横からぶつかってきて、足元が揺らいだ。
咄嗟に声が出たのは、自分が今、とんでもないところにいることを認識したからだ。
地上から約何百mの場所。
ビルの「屋上」に。
「情けない声を出すな。落ちても助けはせんぞ」
塀も何もない超高層ビルのてっぺん。
周りにはボックス型の空調機がずらりと。
太い配管が何本か通っていて、梯子付きの塔屋がポツンと端っこに建っていた。
壁には、大手メーカーの看板が。
何でこんなところに来てる…?
ここ、屋上だぞ!?
さっきまで俺は…
混乱する。
目の前がふらふらした。
目まいに近いような、頭の奥が揺らされる感覚だった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!