ガッ
強烈な接触音が周囲に響く。
鈍く、それでいて重い。
見えない壁を隔てて互いの視線が交錯する。
怪物の爪は届かなかった。
ただし、重力が引っ張られる“感触“がした。
ブーニベルゼはさらに低い姿勢を取る。
グッと落とした下半身を拡げたまま、徐々に両膝が沈む。
刀を逆手に持ち変えていた。
持ち変え、後方へと体を捻る。
サッとスカートが浮く。
足を開いたことによる反動と、反応。
見えない壁の接触面には、確かな「爪の痕跡」が残っていた。
それは「色」や「形」で識別できるものではなかった。
具体的な質感はどこにもなかった。
粗い。
砂を舐めたときのような、ザラザラとした触感。
——ふくらみ。
視界に掠めたのはそんな印象だ。
掻くではなく”穿つ”。
爪が通過した軌道線上には、ミミズ腫れのような線が這っている。
壁の外側に生じる凹み。
それはじきに修復されたかに見えた。
「見えない壁」は、怪物との間に確かな距離を生んでいた。
ブーニベルゼの左足。
それを支点とした境界線が、円形状に敷かれ。
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