プリンセスは殺し屋

殺すぞ?
平木明日香
平木明日香

第34話

公開日時: 2024年1月24日(水) 13:55
文字数:510


 ジッちゃんの言葉は重く、それでいて大それていた。


 意味不明だったんだ。


 “試合に勝つ”


 それが全てで、それ以上でもそれ以下でもない。


 剣を握るっていうのは、“生きるか死ぬかの境界線に立つ”っていうことだ。


 道場の看板にもそう書いてあった。


 『生の中に剣があり、死の外に剣はなし』


 これは試合に於ける生死の境界線を謳ったもので、勝負は常に“一度きりだ”という意味が込められている。


 ジッちゃんは口うるさく俺に言い続けてきた。



 「立ち合いは生きる死ぬかの分岐点だ。


 竹刀が真剣であったなら、おそらく次はないだろう。


 だからこそ竹刀を握る為に準備しなければならない。


 一瞬の未来を切り開くのは、常に「今」しかないのだから。」



 子供の頃はなんとなくわかったような気がしていた。


 言葉の意味っていうか、その意味の中に込められている気迫…?みたいなものが。


 ジッちゃんの背中を見てきた俺にとって、「生死」っていうのがなんなのかを、わかったような気でいた。


 勝つか、負けるか。


 そこに言い訳はできず、結果だけが全ての「時間」を支配する。


 ようはそういうことでしょ?って、自分なりに解釈してたんだ。


 どんな手を使っても、生き残ることだけが、「次」を連れてきてくれるのだから。




読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート