「ユウト。よく聞きなさい。勝負の境目はすでに“起こって”いる。こうしている間にも、時間は過ぎているんだよ?」
「…それが?」
「私たちが生きている時間には限りがある。それに、選択をする「数」にも」
ジッちゃんはこう言いたいみたいだった。
普段の生活の中で“嘘をつかないこと”。
日常の1秒1秒の中に「死」を切り離せる領域がある。
全ては「一瞬」だ。
一瞬で、物事の運命が決まる。
だから一つ一つの選択に気をつけなさい、——と、ただ、真っ直ぐ。
あれ以来だ。
俺はずっと考えてきた。
ジッちゃんに追いつきたいって気持ちが強かったのもそうだけど、あの日の言葉がずっと残ってたんだ。
「強くなるために剣道を始めたわけではない」
その言葉が、どうしても理解できなかった。
強くなる以外に剣道をやる理由なんてない。
そう思う以外になかった。
「強さ」だけが、あの当時の俺の全てだったから。
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