ドドドドドドドド
大地が震える音が聴こえる。
感じたこともない気配と、圧力。
背筋に伝っていく悪寒。
あの時もそうだった。
旅館で感じた、得体の知れない気配。
さくらの姿が変貌し、巨大なビルが突然現れた時のような圧迫感を感じた。
まるで、闇の底を覗き込んだような深い深淵があった。
目の奥は黒く、それでいて“遠かった”。
視線が合っているはずなのに“合っていなかった”。
同じ「生き物」だとは思えなかったんだ。
それほどまでに、果てしない「距離」を感じた。
「…ありゃ一体なんだ!?」
「言ったでしょう?あれは「悪魔」です。あなたには馴染みがないかもしれませんが」
「悪魔っつったって…」
「恐らくあの少年は契約を交わしたんでしょう。…しかしもう手遅れです。契約の条項は詳しく知りませんが、元の肉体は完全に消失してしまった」
「消失!?」
「「契約」とは、基本的には対等な立場関係の上で成り立つものです。しかしその「内容」によっては、人間側に不利な条件がつく」
「…ヤンキー野郎は、…死んだのか?」
「乗っ取られたと言った方がいいでしょう。ブーニベルゼ様が彼をここに連れてきたのも、魂を解放するためです。残念ですが、あの少年はもう人間界には戻れません。しかし「魔界」を彷徨うことはなくなる。少なくとも、あの悪魔を倒した後は」
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