ゴッ——!
ヤンキー野郎の竹刀を受ける右手。
右腕に接触した竹刀が、衝撃で割れる。
真っ二つだった。
触れたと同時だ。
バキッ
と、根本から捻じ曲がった。
受けた右腕の衝撃を意にも介していなかった。
「彼女」は、横目で俺を見ながら憮然としていた。
ヤンキー野郎の突進など、気にも留めずに。
「チッ。使えないな。だが——」
折れた竹刀を投げ捨て、しゃがみ込む。
両足を開いて低空姿勢へと移行した。
右手は開いていた。
ギュルッ
と、黒いモヤのような球体が手のひらの中で圧縮されていく。
彼女は相手のその挙動に微動だにもせず、ただ、その場に立ちすくんでいる。
動こうともしなかった。
視線でさえ、相手の方を見ずに。
ドッ
鈍い音が場内に響く。
ヤンキー野郎の手が、さくらの体の表面に触れようとしていた時だ。
その「音」は、重力の変遷の中に響いていた。
——いや、それがどの方向から働いた「力」だったかはわからない。
衝撃波が周囲に伝播しながら、空気を穿つ。
耳の奥で重低音が響き渡り、空間を揺らす。
ヤンキー野郎の腕が変な方向に曲がっていた。
曲がり、——砕けていた。
骨が露わになっていた。
まるで、何かに押し潰されたかのようだった。
「貴様程度の力で、私に「攻撃」を仕掛けるなど…。恥を知るがいい」
ヤンキー野郎の顔には血管が浮き上がっていた。
表情は笑っていた。
痛みなど感じていないようだった。
——それだけじゃない
再生。
それをどう表現していいかわからない。
わからないが、とにかくあり得ないことが起こった。
変形していた腕が、瞬時に元の形に戻ったんだ。
戻ると同時に、拳を固めた。
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