プリンセスは殺し屋

殺すぞ?
平木明日香
平木明日香

第45話

公開日時: 2024年1月31日(水) 12:50
文字数:500



 …がはッ!



 体の中心に走ったのは、言いようもない重い「衝撃」だった。


 まるで鉄球が勢いよくぶつかってきた感じだった。


 全身が浮き上がるほどの畝り。


 “躍動”が、足元の地面を揺らす。



 (嘘だろ…?)



 自分の体が宙に浮いていたのは、測らずも分かった。


 しなる竹刀の鋒が、自分の体を通して振動する。


 ヤンキー野郎が視界の前方にいる。


 そう感じたのも束の間だった。


 体育館の壁に、——叩きつけられたのは。



 ドンッ



 背中に伝わる壁の感触。


 ビリビリと痺れる後頭部。



 吹っ飛ばされた…?



 …いや、そんなことが…



 「立てるか?まだ続けるって言うんなら続けるが」



 続けるか…だと?


 …何バカなこと言ってんだよ


 続けるに決まってんだろうが。



 足がふらふらする。



 …なんだ、これ


 どうなってんだ…?



 確かに今吹っ飛ばされた。


 だけど、訳わかんなかった。


 捉えたと思った矢先だ。


 ヤンキー野郎が懐に潜り込んでいた。



 「竹刀の代えはあるのか?」



 …代え?


 見ると、ヤンキー野郎の竹刀が、根本からポッキリ折れていた。



 そうだ。


 アイツが放った一撃が、俺の体にぶつかってきた。


 その時に、竹刀が軋んでいる音が聞こえた。


 ビキッと、押し曲がるゴムのような「伸縮」があった。


 ほんの僅かな時間だった。


 

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