…なん…で…?
俺の瞳には、確かにそう映っていた。
「接触」しなければ、あんなふうに拳は止まらない。
決して寸止めをしているわけじゃない。
一撃を繰り出すモーションは、確かに“完結”していた。
拳は触れていたんだ。
『物体』
——その”表面”には、確かに。
「チィッ」
ヤンキー野郎は、一度距離を取った。
距離にして約2〜3m。
間合いにしては十分な距離だ。
再び攻撃を繰り出す準備を整える。
地面の上を滑る脚。
体全身を使った反動。
腰を落とす。
下半身に重心が移動する。
バッ
そこから放たれた「跳躍」は、あっという間に2人の距離を潰した。
空中に飛び立つヤンキー野郎。
床から約数mの高さにまで跳ね上がり、両腕を振りかぶる。
彼女はそれを迎え撃つ素振りすら見せなかった。
彼女の「動作」は、最小限の中に抑え込まれていた。
ガードが間に合わないわけじゃない。
“守ろうと”する意識すら、“微塵も発していなかった”。
敵が、真正面から拳を振り上げているにもかかわらず、だ。
——壁
それが、実際に「何」に該当するものかはわからない。
確かなのは、ヤンキー野郎の攻撃が届いていないということ。
さっきと同じように、十数センチ手前で攻撃が“防がれていた”ということ。
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