音が、——凹む。
不意にそう感じてしまった。
鼓膜が押し上げられるような。
腹の底を、強く押さえられるような
ドッ
物体が表出する。
色が弾ける。
夥しいほどの空気の変遷が目の前を泳いだ後、土埃が宙に舞った。
空気は重く、脆い。
振動する「揺れ」が、直に皮膚に触れていった。
それは爆発音にも似た振動だった。
床に寝そべっていたはずのヤンキー野郎の体から、得体の知れない“物質“が隆起したんだ。
腕や足は変形し、不自然な挙動がバタバタと全身に及んでいく。
人間の動きじゃないことは確かだった。
外側から力を加えなければできないような動きが、短い間隔の中で次々と起こった。
髪は抜け落ちていった。
皮膚は爛れ、みるみるうちに萎れていく。
まるで、生気を吸い取られていくような“変化”だった。
遠目からでもわかるほどの“蠢き”が、体の内部で暴れ回っているような…
「あれは、悪魔本来の姿です。この場所では常時その「力」を解放できる。気を抜くと死にますよ?」
ヤンキー野郎の肉体は消失し、服もろとも空間に融けていく。
殻を破るように出てきた“怪物”は、黒い鎧のようなゴツゴツした皮膚を全身に浮き上がらせながら、巨大な二の腕を露わにさせた。
見るからに肥沃な筋肉と、膨張する血管。
手や足の先からは爪が生え、背中からは「翼」が。
…ただ、その見た目は翼と呼ぶにはあまりにも“巨き“かった。
”でかい“って言うんじゃない。
ぶ厚い…?
羽は生えておらず、「鉱石」っぽいデコボコした物質が、翼の外側に散りばめられていた。
「鱗」のようにも見えた。
ただ、だとしても“ゴツ”すぎる。
まるで背中から何本ものツノが伸びてきているみたいだった。
「飛ぶ」という動作には適していないように見えた。
だけど…
その“怪物”は宙に浮きながら、空間を揺らすほどの咆哮を出してみせた。
ビリビリと響く重低音。
青白く光る瞳。
全身は骨が露出したように所々が尖っている。
禍々しいオーラが全身から漂い、牙を覗かせる口元からは蒼い煙が。
なんであんなもんが口から…?
どっからどう見てもバケモンだ
何がどうなったら…、こんな…
読み終わったら、ポイントを付けましょう!